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ban_07さんのウィッチズガーデンの長文感想

ユーザー
ban_07
ゲーム
ウィッチズガーデン
ブランド
ういんどみるOasis
得点
85
参照数
1120

一言コメント

ういんどみる10周年記念作の名にふさわしい作品だったと思います。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ういんどみるの魅力といえば、魅力的なキャラ、そのキャラたちによる楽しい掛け合いと飽きさせない日常、1歩先を進む演出面などがありますが、
今作ではその全てを高水準で備えつつシナリオもこれまで以上にしっかりと作ってきたなと思いました。
特に演出面で新しく使われたE-moteですが、口パクの部分などを始め違和感を覚える部分もあったものの、これまで以上によく動くため普段はボイスが流れているときも目線がテキストウィンドウに集中気味だったものが立ち絵にもよく向かうようになり、「セリフを耳で聞き動きを目で見る」という形でボイスをよく聞くようになりました。
これによってよりキャラたちの掛け合いを楽しむこともでき、よりキャラが「生きて」いるように感じられ、初めの頃に感じていた違和感もすぐに気にならなくなりました。


○個別
・柴門姉妹
水澄とえくれあそれぞれに一応√がありますが、どちらもメインとなる部分が同じなのであまり変わりません。
最初は水澄固定、水澄√クリア後に個別途中に選択肢追加でえくれあへ分岐
水澄とえくれあの関係(魔女とそのワンドでありオートマタ)を知るところから話は始まり、街の魔力供給を受けていないと動けないオートマタであるえくれあに外を見せてあげるために、母親の研究していた独立して動く魔力炉の開発に動く という流れ
お互いの存在で十分だと思っていた水澄が洋輔という存在とふれあい、えくれあのずっと隠してきた思いを知っていくところはまさに「新しい1歩を踏み出す」といった感じですごく好きでした。
キャラに関しては、作中でも言われてましたが、水澄は天使でした。 えくれあは、最初こそ当たりのキツイものの、「素直」になって心を開いてくれてからは非常にかわいかったです。

・莉々子
莉々子さんと洋輔が騎士として、そして1人の人間としてお互いに成長し、一人前になっていく話。
序盤の莉々子さんと洋輔のすれ違いや、終盤の2人で団長に向かっていくところなどはすごく良かったと思います。
莉々子さんの、洋輔に「女」として見られてることに気づいて困っているところや女子寮の前で抱きしめあっているところ(特に告白直後)などは非常にかわいかったです。
団長のことを思い、団長にために乗り越えていく様はまさに成長物語かなと強く感じました。
人として成長していく姿、大人から受け継がれていくもの(ここでは騎士団)というのはやっぱり好きですね。

・涼乃
この√から魔女という存在、風城の秘された秘密などそれまで隠されてきた秘密が明かされていく。
ソーサレスとして、伝統ある雪村家の長女としての自分があやりや洋輔と触れ合うことでいろいろなことを知っていく。
あやりが「ウィッチ」という特殊な存在であること、それを知った上で涼乃は自分に何が出来るのか悩む。
風城の秘された真実を通して子供が大人へ成長していくような そして、大人から子供へ受け継がれていく(魔力の抽出という仕事)ような物語。
明乃との姉妹喧嘩や、ウィッチとしてやらねばならない魔力の抽出の副作用で失われるあやりの記憶を残すために雪村の秘術を使うことを決めるところなどはグッときました。
ただ、ラストがややあっさり行き過ぎて弱く感じたかなと思いました。
また、キャラとしても非常に魅力的でした。
氷が溶けるように 冬から春へ移り変わるように 少女というつぼみが女として花開くように 徐々に「女」として魅力的になっていく涼乃がすごくかわいかったです。
まさに「男を立てる女」を体現したようなキャラだったと思います。

・あやり1
あやりがウィッチとして魔力抽出を受けていること、その副作用で記憶を失っていることを知ってあやりのために何かしようと洋輔が奔走する話。
こちらの√では、ウィッチとしての避けられない運命として魔力の抽出を受け入れ、その上で一緒にいることを選択する2人。
涼乃の方でも書きましたが、この√もラストが少し弱いかなと感じました。
記憶を、みんなのことや洋輔のことを忘れたくない、覚えていたいと強く想うあやりの姿はすごく胸を打ちました…。

・あやりTrue
これまでの√をすべて踏まえた上で進める真のメイン√。
あやりが洋輔と出会ってから最初の魔力抽出から逃げ出し、あやりがウィッチとして覚醒してしまうところから話は始まる。
あやりがウィッチとして覚醒してしまったために、風城の街は世界が変わり、魔物たちが蔓延る場所へと変わってしまった そのことを申し訳なくは思うものの、後悔はしていない2人。
これまでの√の軽いおさらいなどを踏まえつつ、これまで隠されていた真実の残っていた部分が明かされる。
ウィッチとして覚醒してしまっても2人で一緒にいられるように そう願って街を、大人たちの考えを変えさせるために立ち向かっていく場面はすごく好きでした。
他にも、Oasisで悠子さんと洋輔とあやりの3人でのお茶会は、「やっぱり家族だなぁ」と涙しそうになったり、団長や片山さんなどは、子供に背中を見せる大人としての姿がすごく印象的でした。


○まとめ
柴門姉妹と莉々子さんの√は風城の表側というか、重要な部分についてあまり触れられずに全体的に明るい雰囲気で進み、どちらかというと萌え重視のように感じました。
ですが、シナリオも決して手抜きというわけでもなく、十分に楽しめるものでした。
そして、涼乃とあやりの「魔女」2人の√(特にあやりTrue)ではキャラ萌えの部分をしっかりと忘れず、その上でシナリオをしっかりと締めてきたなという印象。
風城という街やウィッチや魔物という存在など、重たくなる要素がありつつも明るさ、「日常」としての部分を忘れさせず、それでも締めるところをしっかり締めることでどんどん惹きつけられていきました。
今回この作品に期待していたものを、一回りも二回りも上回ってくれ、非常に満足した作品でした。