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ban_07さんのりんかねーしょん☆新撰組っ!の長文感想

ユーザー
ban_07
ゲーム
りんかねーしょん☆新撰組っ!
ブランド
りぷる
得点
75
参照数
1098

一言コメント

お世辞でもなんでもなく、心の底から本心で「おもしろかった。 プレイして楽しかった」と言える作品だった。確かに欠点はあるし、こういうところが残念だなと思う点もあった。だがそれでもプレイしていて楽しかった、おもしろかったというのが私の偽らざる本音である。

長文感想

この作品の最大の欠点は主に設定面での説明不足であると思う。特にOP前のプロローグ部はそれが顕著であったと思われる。
通常、多くの作品では冒頭部ではその作品における世界観やキャラの立ち位置、設定などについてそれぞれの描き方で説明が入るものが多い。だが今作ではそれがまったくと言っていいほどに無い。それどころか、冒頭からほとんどの設定を読み手側が理解しているものとして描かれている。
序盤で投げた(Give upした)人の多くはこれに耐えられなかったのではないかと思っている。ろくに説明もされずに理解しているものとして描かれ話が進んでいくのだから、ついていけないと言われても仕方ないのかもしれない。
私がそこでGive upしなかったのは、「分からないものは分からないまま」受け止め、交わされる会話やキャラたちの行動、話の展開などから少しずつ設定などを読み解いていったからである。
言葉にすれば当たり前のことのようにも見えるのだが、OP前までで(私のプレイ時間で)2時間程度、必死に頭を使いながら読み進めていくのは正直かなりの労力を必要とした。私自身最初はなぜこんなに必死になってプレイしているのだろうと思ったこともあった。
だが、OP辺りまで進めていくと少しずつではあるが理解が追いついてきたのだ。その結果話の展開などに理解(と妄想)が進み楽しめるようになっていった。もちろん設定の全体を理解するとっかかりが分かったというレベルであり、まだまだ読み解かなければならない部分などはあるが、OPを超えてからは多少ではあるものの「掴む必要のある情報」の量も少なくなるためプレイはしやすくなったように感じた。


また、設定それ自体がさまざまな要素で絡み合い、より複雑になっていることも理解することを妨げているようにも思えた。
まさに「節操無し」という言葉がぴったりだと思えるほどにいろいろな要素が混ざり合い、「ここまでやるのか…。」と思うほどのものだった。
重要なところでタイトル通りのりんかねーしょん(REINCARNATION)つまり輪廻転生や、並列世界理論などを始めとするSFやファンタジー、夢、果ては神話まで絡んでくる。
ここまでさまざまな要素を混ぜ込むとどうしても浮かんでくる不安が「設定上の矛盾」である。これに関しては、あると言えばあるのだが、より正確には「展開と設定で矛盾がおきないように改変されている部分がある」とするべきであろうか。
例えば並列世界の理論。実在するものと今作の作中のものでは微妙に「認められる領域」と「認められざる領域」にズレがある。こうなると今度はそういう改変による破綻はしないのかという不安点が出てくるのだが、それに関してはその対象となる主人公たちの設定がチートじみているというか、ある意味で裏技的設定によって解消されている。


それから、夢や現、そして並列する他の世界などどのキャラの視点に立つのか という部分がそれなりの頻度で切り替わるのだが、ここの切り替わりが非常に分かりにくい。
プレイしながら、今は誰のどういう視点なのか という部分を意識しなければならないのも慣れるまでは大変であった。前世の記憶やそれを見せる夢、並列する世界の同じでありながら同じでない存在など、非常に似通ったキャラたちが登場してくることもそれに拍車を掛けていた。
シナリオ上重要な部分であるからこそ、余計に気になった部分でもある。


それから肝心のシナリオだが、中身について触れると先に述べたような複雑な設定にいろいろ突っ込んでいかねばならず(無駄に)長くなってしまいそうなので触れません。
全体の構成は要するにTRUE開放型とでもいうのか、個別シナリオを進めていきEDを迎えていくことで最終的なメインシナリオが開放され、そのメインシナリオでこれまでに進めた個別シナリオが繋がっていくタイプ(1/2summerやナツユメナギサ、はつゆきさくらなどが似たようなタイプであろうか)。
END数は8(メインキャラ4人にサブキャラ4人)。メイン4人(特に最後のメインシナリオでの菊)はシナリオも十分楽しめるものであったのだが、サブの4人がやや個別が雑というか、あまりに短かったように思う。
だが、そういった不満も最後のメインシナリオ(REINCARNATION)の終盤~〆のなかなか好みな展開に全部吹っ飛ばされてしまったような気持ちです。最後の〆が実に気持ち良く終わることができた。そこは非常に満足した点でもあります。
また、キャラ自体はみんな魅力的であるため、そういう意味でも満足できたしHシーンも悪いものではなかった。


ここまで欠点や不満点といったマイナス要素を書き連ねてきたが、それでもやはりこの作品はおもしろかったと、プレイしていて楽しかったと言いたい。
なかなか掴みきれない作品の全体像が見えて来、それが分かったときの気持ち良さは好きなんです。今作の説明不足に感じた部分が余計にそう感じさせてくれたのかもしれません。