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ban_07さんの星空のメモリア -Wish upon a shooting star-の長文感想

ユーザー
ban_07
ゲーム
星空のメモリア -Wish upon a shooting star-
ブランド
FAVORITE
得点
88
参照数
280

一言コメント

特にこれといった不満点も無く、全体的に高水準でまとまった作品。 やはりなかひろの書く「妹」はいいですね。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

なかひろは「家族」 その中でも特に「妹」について書くのが非常にうまいと思う。
洋の妹である千波、こももの妹であるこさめ、衣鈴の妹である鈴葉、飛鳥の妹である伊麻(こちらはFD)
どのキャラもシナリオにおいてとても素晴らしい活躍をしてくれたと思う。

今作では星への願い、約束などを始めとしたファンタジー色の強い設定ながらも、なかひろの良さの出たシナリオだったように思う。


・明日歩√
洋と明日歩の立場の重なり方から洋の気持ちを察し、自分は身を引こうを考える明日歩の心理描写が非常に良かった、
聞こえない片耳と昔に起きた事故 2つの要因を中核に起きた親子のすれ違いとその和解の描き方も素晴らしい。

・こもも√
妹のこさめの死という受け入れがたい現実とそのトラウマを突きつける悪夢の演出は○
自身の死を受け入れ還ることを選ぼうとしたこさめ、こさめの死を受け止めた上で存在することを望んだこもも、全ての真実を知り、だからこそ2人の娘の想いと答えを尊重しようと見守った万夜花
それぞれが家族として相手のことを思いやる場面や、姉妹の想いを通じ合わせる場面は良かった。

・衣鈴√
大切なものを失う恐れから友達を作ろうとせず、夜空に昔の思い出の星空を求める衣鈴
壊れた望遠鏡を通じて、自身に対して気持ちを向けてくれる 心を開いてくれる相手を受け入れ前を向けるようになる流れはすごく好きでした。
夕方の屋上での千波と衣鈴の場面がひどく涙腺に響きました。

・こさめ√
すでに死んだ身であり、「普通」の人間とは異なる存在である自分には恋をする資格がないというこさめと、そのこさめの存在を肯定し認め、受け止める洋のやり取りが好きでした。
こもも√とは違った面から姫榊家の面々の想いを描き、それでもなお最終的に同じ結論に達するところはやっぱり家族なのだなぁと感じた。

・千波√
千波の父の死、兄妹の母の過労と死、母親の代わりに千波の世話をする洋
そんな家族の負担になっているのではないかと考えてしまう昔の千波の思いの変化していく過程の描き方が良かった。
「家族」「兄妹」の描き方がとても魅力的だった。

・夢√
隠し√にして今作のメイン√ 昔に洋と約束をした「展望台の彼女」
自分のことを忘れて、他の幸せを見つけて(優等生になって)ほしいと願う夢 絶対に忘れまいと、夢のことを想い続ける洋
似たもの同士の2人のやり取りにはニヤニヤさせられました。
夢の病気と死、そしてメアの存在 夢に2度目のフラれから終盤の展開は非常に素晴らしかったです。
特にED直前のメアのセリフは卑怯でした。

・メア√
夢と洋の2人の願いから生まれたメアの存在と約束 そして家族
夢√の裏のような感じでした。
 
・まとめ
全体を通して「家族」というものをとても意識させられた作品。
どのキャラも魅力的で、テンポも良いので共通から個別までサクサクプレイできた。
それぞれが相手を想いやり、愛し愛され、非常に暖かい世界観の読んでいて心地良い作品でした。