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bacchusさんの信天翁航海録の長文感想

ユーザー
bacchus
ゲーム
信天翁航海録
ブランド
raiL-soft
得点
98
参照数
538

一言コメント

愛らしいダメ人間たちの海洋冒険活劇

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

raiL-softをプレイしたのは霞外籠逗留記に次いで二作目だったが、冒険モノなので今作のほうが読みやすかった。ただし、希氏の独特な地の文は健在なので体験版プレイは必須。

登場人物は奇人変人揃いで、そのなかでも異彩を放つのは主人公の朔屋。躁鬱持ちのダメ人間で、そして誰とのエンディングを迎えてもダメ人間であり続ける。
脇を固めるサブキャラクター陣も活字中毒の水夫長や健忘症の機関長、殺し屋の智里やraiLではおなじみ(?)のcv草柳順子のモブ達と奇人変人度ではメインキャラクター陣に負けていない。というか智里は一体何者なんだお前は。

痩せぎすで嵐のときだけ本領発揮できる船長クロ。
まさかきらきらしたモノを集めるのが好きというのが伏線だったとは。
グッドエンディングで朔屋と一緒にさらにダメになってるのが可愛かった。

付近に片割れがいれば大胆不敵な一等航海士シサム・キサラ。
「泣き叫ぶ」がグッドエンドだとは。流石朔屋である。

退屈紛れに信天翁号に乗船した女客彩久津泪。
密航者ルートにも深く関わる、伝説や神話の再現と人魚姫の話。

他ルートでは散々な扱いだったが真エンドで本領発揮する密航者。
船霊に竜骨潜らせたりしてよかったのだろうか。まあいいよね、どうせ襤褸船だし信天翁号だし。
空気を読まない(読もうとしない)おしゃべり娘で行為の最中でもそこは変わらず。
一番好きなキャラクターだった。

密航者ルートは各バッドエンド回収後に解放される真エンドであり、まさしく信天翁航海録そのものの話だった。
世界への絶望から始まり、次の航海への希望で締められる。やっぱりいなくなった仲間たちを集める展開は王道ですがいい。
このルートは演出が特に素晴らしく、V-Rシステムや密航者のテーマ「船倉のエトランジェ」、ED曲がグランドフィナーレに華を添える。
他ルートより短いが、その分凝縮されており読後感が爽やかすぎて喪失感を覚えてしまうほど。

いやはや、最高でした。濃厚な希ワールドを味わえました。