思っていた以上のものがあった。そしてちょっとぞっとした。
作中の意味が分からない箇所は、すべて伏線だったと言わんばかりの内容だった。
冒頭で秀が周りに無関心なのは、
荊と別れざる得なくなって生きていている意味を見出せなくなったから。
蜥蜴へ関心を示したのは、
不治の病にかかった荊の病気も蜥蜴の尻尾のように生え変わって欲しいという思いから。
荊が自殺したのは、
自分のことを忘れようと機械のように無感情で生きる秀を立ち直らせるため。
尻尾が再生しない蜥蜴がいるなら再生できる人間がいると思ったのは、
荊の死を受け入れられなかったから。
荊の自殺後周りの女の子と仲良くなっていくのは、
自殺した荊の気持ちを察して荊のことを忘れつつ普通に生活しようとして。
両腕が切れた叶とSEXをする夢を見たのは、
両腕がなくてもいいから荊に生きていて欲しかったから。
秀が自分の指をナイフ(細胞が破損しないとは思えない方法)で切ったのは、
それで治らないと電車に轢かれた荊を再生できないから。
自分の指が再生してもなお、叶の身体を切断したのは、
誰でも再生できないようだと荊を再生できないから。
(たぶんあっていると思うけど、どこかに間違いがあったらごめんなさい)
など,秀が狂っているから行っていたと思っていた言動のすべてに意味があって、
それが最後になって一気にわかるところが読んでいて爽快だった。
同時にすべてがわかった時に、秀を完全には否定しきれなくなった自分にぞっとした。
最終的に切る描写を見る以上に怖い経験した気がする。
一方で、荊(電車で轢かれた子)がすべてを持っていた感が非常に強くて、
公開されていたヒロイン3人がサブキャラになってしまった感が否めない。
特に智秋と真菜香はシナリオ的にもサブシナリオな印象が強い。
智秋目的だった自分としては、ちょっと残念。