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azu3さんのジーザス13th -喪失われた学園-の長文感想

ユーザー
azu3
ゲーム
ジーザス13th -喪失われた学園-
ブランド
XUSE
得点
50
参照数
2295

一言コメント

全体的に消化不良

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

養護施設で育った主人公が、突然死んだ大富豪の後継者として学園に呼ばれて
そこから事件に巻き込まれるというストーリーなのですが、
シナリオも設定も、全てが消化不良のまま終わります。

まず、作中では世界大戦が勃発した後の話であり、
新エネルギーの奪い合いや、帝国や連合があったり、世界が謎の壁で区切られたり
英雄達による激しい戦いがあったりしたらしく、それらを下敷きに話が進んでいきます。

……が、その辺の細かい設定に関してはほとんど触れられません。
そもそも学園が舞台のゲームなので、そんな設定に全くと言っていいほど意味がないです。
じゃあなんでそんな設定にしたんだと思いますが、これは同ライターが担当していた携帯ゲームの
「DeepDiver」と世界観の繋がりがあるらしく、詳しく知りたければ
そちらをプレイしないと意味不明のままです。

ゲームを進めていくと、造形が安っぽくて微妙な魚人風クリーチャーが登場し
暴徒と化した人々が「ふんぐるい」とか言いながら襲ってきます。
そして学園の教会では旧神と新しい神がどうのという教義。
「あぁ、クトゥルフがベースのオカルト物なのか」と、なんとなく察しながら
共通ルートを進めると、個別ルートに分岐した途端に即EDです。
シナリオの割合は、共通部9に対して個別1くらいです。
なので、最後にどのヒロインとくっつくか程度しかシナリオの大筋に差は出ません。

主人公の隠された力やヒロインの過去など、掘り下げるべき箇所が
個別に入った途端にあっという間に終わってしまうのでとにかく物足りない。
終盤が駆け足すぎて、ポカーン状態です。

作中の登場キャラ達には「ER」という超能力が発現しており、それを使ってバトルするのですが
主人公がこの能力に本格的に目覚めるのはED直前の最終バトルです。
つまり、シナリオの9割方はユーザーは無能な主人公をやきもきしながら見ることになります。
一応主人公には「古武術を修めている」という設定がありますが、
唯一の見せ場は人形を使った訓練の時くらいしかない上に、
クリーチャーと戦う時は普通に銃を使うので、実質死に設定です。

もちろん私闘は厳禁なので、ERを使った学生同士の戦いもありませんし、
主人公が武術だけを頼りに強大なER持ちと戦うという展開も起こりません。
せっかくの超能力学園物という設定を、ことごとく台無しにしています。

また、ほとんどのルートでは

「真相を暴いて学園の事件は解決したが、世界には敵がまだまだ残っている。俺達の戦いはこれからだ!」

という少年漫画の打ち切り臭い終わり方になります。

設定も中途半端なら終わり方も中途半端でした……。