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atak303さんの素晴らしき日々 ~不連続存在~の長文感想

ユーザー
atak303
ゲーム
素晴らしき日々 ~不連続存在~
ブランド
ケロQ
得点
65
参照数
1099

一言コメント

この作品が言っていることがわからない人間の、ちょっとした希望のようなものをざっくりと。(注:引用されているものがわからない、という意味ではないです)

長文感想

 私がこの作品を読んで最初に感じたのは、この作品で用いられている思弁的な言葉たちのつかみどころのなさ、だったように思います。
 以後は、この作品にまつわるさまざまな解説を読んでみましたが、それらの解説は私が見た限りだと「作品の台詞を読解し、読解したものの理解の補助線として哲学がある」という書き方ではなく、「まず哲学書とその思想があって、文章の読解はなしに意味をあてはめる」という方式をとっているものでした。しかし、それは元となった本の解説と言うべきものである訳で、この作品の解説とは言えないように思われます。それでは、この作品自体の思想はどこにあるのか?ということを少しだけ考えてみました。

 例えば、水上由岐の「正しい祈り」という台詞を考えてみます。
 元ネタとなっていると思われるヴィトゲンシュタインは、『論考』において「正しい祈り」ではなく「祈り」という言葉を使っています。しかし、『素晴らしき日々』では「祈り」ではなく「正しい祈り」という言葉が使われているのです。ヴィトゲンシュタインはただ「祈り」と言っているわけで、すかぢ氏の思想—つまりはこの作品独自の思想は、むしろその差異、つまり「正しい」という言葉にあるのです。こういった要素を解説することこそ、『すば日々』読解の本質ではないのでしょうか? 

以上が、筆者のこの作品及びその解説に対する、ざっくりとした意見です。
いつか「作品の読解」を行う(引用でない部分の言葉を読解する)解説が出てくることを祈っております。