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asteryukariさんのこいびとどうしですることぜんぶの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
こいびとどうしですることぜんぶ
ブランド
Sirius
得点
77
参照数
178

一言コメント

甘くて蕩ける…だけでなくとても温かい。メインである二人の恋路だけでなく視野を広げ周りを見てあげてると、より一層幸せになることができるかなと。お腹いっぱい、満足のいく作品だった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

容姿端麗 頭脳明晰 スポーツ万能そして…冷静沈着というあまりにも高嶺の花の園生玖羽ちゃん。そんな最強たる美少女から告白のOKをもらったらそりゃあ有頂天にもなる。「信じられない、園生がオッケーしてくれた──!」うん、私が同じ立場でも反応をすると思う
。まあそんなことはないのだけれど…(羨ましすぎる‼)

でも玖羽ちゃん側もただ何となくOKをしたのではなく、きちんと主人公に興味を持つ瞬間があったからというのが良くて、その瞬間を彼女視点の回想にて描いてくれたのがとても素敵だった。生まれてはじめてのこと、初恋が見事に実ってしまったわけだ。ただの”ばんざい”にあんな効果があるなんて主人公は思ってもいなかったはず。でもそんな打算的な考えではない、純粋な彼だからこそ彼女は惹かれたに違いない。

主人公視点で考えると可愛い娘がどんどん自分色に染まっていくように感じるが、そうではない。彼女も主人公には感謝していて、主人公と同等かそれ以上に深く深く想っているのだ。それを念頭に置いて物語を読み進めていくとやや多めなえっちシーンの数々も愛の大きさを表しているようで、とても幸せなものに見えてくる。玖羽ちゃんが度々口にする「嬉しい」という台詞は本当にそうなんだろうなぁと、聞き入ってしまうこともしばしば。

そんな二人だから同棲することになった時も何ら驚きはなかったし、むしろ今まで以上に二人で過ごす時間増えたと考えると、期待と喜びしかなかった。同棲中の玖羽ちゃんの台詞はどれも見ていてが緩んでしまうほどに素敵なのだが、最も好きだった台詞がこれだ。

「朝から愛し合えるって、嬉しい…ね」

さりげなく零れた言葉にしてはあまりにも威力が高すぎた。同棲によって何が変わるか、それは二人の時間が増えるだけではなかった。朝から晩まで愛する機会が生まれるということの重要性…いや幸福を感じた瞬間だった。この時の玖羽ちゃんの表情がまた嬉しそうなのなんの…。

突如、挟まれる鍵を失くしたエピソードは玖羽の気持ちを考えてあげると胸に来る。玖羽にとってあの鍵は、二人の関係を表す象徴のように思えたのだろう。だからこそあんなに悲壮感が湧き上がってきて号泣してしまったわけだ。他にも鍵のマークがタイトルにも入っていたりと、二人にとってどれだけ大切な存在かを示している。

また、この作品の良い所は玖羽ちゃんが女の子らしくなっていく部分だけではない。主人公を通じてつかさや航路、チカ先生…それからクラスの皆とも交流を深めていくのが非常に良い。誰も手が出せない女ということで、誰ともコミュニケーションをとってこなかった彼女が皆の中で生き生きとしている。その光景はとても胸に響いた。

二人のために料理を教えてくれたり、玖羽ちゃんが風邪を引いた時にはお見舞いに来てくれたり、温泉旅館の宿泊券をプレゼントしてくれたり…本当に周りの人間に恵まれていた。また、それを強く感じ、しみじみと胸中で噛み締める主人公も良かった。

そして、そんな周りの温かさが反映されたENDは…やはりお嫁さんENDだ。女の子から大人になっていく玖羽の姿は形容し難い美しさ。そして今まで二人を支えて生きてくれた人たちがきちんと一枚絵の中に入っていて、嬉しそうな表情を浮かべている。ああ、結婚式のシーンがある作品の良いところってここだよなぁと、短い時間の中で様々な感情が湧き上がってきた。

最後に聴く「こいびと☆アクセント‼」は初見に聴いた印象とまるで違った。ずっと玖羽ちゃんのための曲だとばかり思っていたが、そうではない。坂道を駆け足で登りたくなるのも、好きの気持ちが溢れているのも、隣にいるとドキドキするのも二人の気持ちを表したものだと、そう感じた。


本当に最初から最後まで愛たっぷりの内容で、それをまさに今渇望していた私として嬉しいばかりだった。二人はこの先も愛を育み合って、周りにも支えられて生きていくのだろう。久しぶりに二人のその後について全く心配の要らない作品に出会えた。