この作品を一言で表すと「楽しい」に尽きる。
西部劇を思わせるような雰囲気ある舞台設定と、濃すぎるくらい個性が強いキャラクター、そしてそれらを存分に生かしたストーリー、またエロゲという媒体だからこそのエンタメ性。もうとにかく楽しかった。これがこの作品に対する感想の全てといっても良い。
最初から最後までぎっしりと楽しさが詰められていた。どんな作品も多少は退屈な部分があるものだが、この作品は違う。長さが程よいのもあるが、本当に楽しくなかった瞬間なんて一秒たりともなかった。
また、終盤に差し掛かり、陽気な物語ではなく、感動的な物語になっていく流れを作りつつも最後はやっぱり陽気な雰囲気を保ったまま幕を閉じるというのがあまりにもこの作為らしく、そして素晴らしかった。やはりこうでなくてはと、喜びに包まれた。
加えて終盤に出てきたボタンアクションなんかは単純なシステムながら心が躍った。キャラクターを通じて自分も戦いに参加しているような、そんな気分にさせてくれる。にしてもあれだけ丁寧にカウントまで付けてきたにもかかわらず、数で揉めることになるなんて笑うしかない。この場面だけではないが、彼女の会話が何より面白かったのだ。
イライザは初見こそ美人だなと思いきやその性格はおっさんそのもので、彼女に笑いを誘われることが一番多かったかなと思う。特にあの女性とは思えないほどのしかめっ面。あの顔で悪態つくだけでもう面白い。性欲が強い面もキャラクターの性格にあったものだし、彼女適当さがよく生きていた。
そして、それは物語においても大きく作用していて、彼女はポンポン敵味方に変わり身していくわけなのだが、まったく不快感を抱かない。そういうキャラだからと分かっているからその多くが笑いに変わっていく。まあ他のキャラクターもそうなのだが、彼女の場合は特にそう感じた。
終盤の彼女の心境の変化は素敵で、大金ばかりを求めてここまで来たのにいざ手にしてしまったら使い道に困ってしまう。ならどうするか。その答えが「知っちゃこっちゃねぇ」。自分を縛ろうとするやつには噛みつく、それは150万ドルの金であろうと同じなのだと。いやぁ、ここにきてまた彼女の性格の良さが出た。そしてそこからイライザらしく、黒のフランコらしく生きていくことに決めた彼女には敬意を表したい。革命万歳!フランコ万歳!
金髪は初めこそ、そんなに気にしていなかったのだが、読み進めていくたびにどんどん魅力が増していった。終盤になるころにはイライザと肩を並べるに足る戦友とも言っていい存在になっていた。
彼女の名場面といえばまあ600ドルを弾丸に変えて返すシーンだろう。センスの塊だ。また、本物の黒のフランコの正体が分かったりするなど物語としてもかなり重要な場面であり、それだけに非常に見ごたえがあった。何より黒のフランコの愛銃であるはずの「黒い鷹」の不発で終わるというのが何とも皮肉が効いてて良い。お前はあの時俺を捨てただろうと、銃が反抗したようでたまらないのだ。
最期には彼女も黒のフランコの軍勢に加わり最高の盛り上がりで締まったなと。
「殺っちまおうぜェーッ!!同志たちよォー!!」
いやぁ、こうやって思い返してみても楽しさが蘇ってくる。質の良い映画を見終わった時のような感覚だ。本当に無駄のない作品だった。