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asteryukariさんの初めて泣いた日の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
初めて泣いた日
ブランド
HANEMINE
得点
76
参照数
69

一言コメント

人と人との繋がりを大切にしよう、そう思える作品でした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本編一時間、サイドストーリー三十分程度の短いお話ですが、その中に製作者が伝えたかったであろうことがぎっしり詰まっていて非常に満足のいく作品でした。確かに主人公についてや、人間らしい描写など荒いところはありましたが、それでも話の核となる部分はしっかり感じ取ることが出来ました。この作品は本編も良かったんですが、サイドストーリーであるCROSSと製作者さんのお話も非常に良かった。

劣悪な家庭環境で育った主人公が眞美と都という二人の女性と出会う。この物語は様々なことを経験していく主人公を介して読んでいくというよりは、主人公、眞美、都の三人を見て物語のテーマを読み取るという感じで、中々刺さるモノが多かったです。なぜ都が会って間もない主人公に対してあんなにも必死になりながら生きることについて説いたのか、南京錠に込められた意味などとにかく読んでいて触発される部分が多かったです。
また、CROSSでは眞美についての話が書かれており、本編ではどこか達観していた彼女が実はどんな状況に置かれたか、本心では何を思っていたのかなどがわかり、より一層この作品の完成度を上げていたと思います。しかしながら眞美に救いがあったというよりは残酷な現実を目のあたりにすると言った方が正しいため、そういう意味では評価が分かれるかもしれません。


死自体に美しさを求めるのではなく、死を通して生きるということの美しさを伝えたい。それは生への願い、生きる渇望であり、製作者さんの考えがよく反映された作品だったと思います。作品の内容については詳しく触れていませんが、生きるということや、人と人との繋がりについて考えるのが好きな方は一度プレイしてみることをお勧めします。