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asteryukariさんの北へ。 White Illuminationの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
北へ。 White Illumination
ブランド
ハドソン
得点
81
参照数
80

一言コメント

応援してあげたい、寄り添いたい、度々そんな事を思うくらいには惹かれる女の子の揃った作品だった。個別に用意されたシナリオは短め且つ軽めのものが多いが、彼女達と共に過ごす時間は実に楽しかった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


言わずと知れた北海道観光アドベンチャーゲームであり、実写の背景を使っているのがとても印象的。北海道の名所を巡りつつ、女の子達との距離を詰めていくのが主な内容である。その内容、主題歌からもわかる通りまあ北の地に対する熱意が凄まじくて、本作が発売した当時は北海道で様々なキャンペーンや活性化活動が行われていたとのこと。叶う事なら私もイベント等に参加してみたかった。


流れとしては夏編を経て特定のヒロインと仲良くなり、冬編で恋人関係になる。ヒロインが8人もいることに加えて、システムがかなり劣悪なものなので、周回は結構大変。自慢のC.B.S.に何度頭を悩まされたかわからない...。しかしながらクリアした今となっては良い思い出であるし、ヒロイン達と楽しい時間を過ごすことができたなと思う。個別ルートに関しては感動とか、驚きとか、そういった感情を覚えることこそ少なかったものの、読めば読むほどにヒロインに対する想いが募っていく感じが良かったなぁと。ここからは私の心を掴んだヒロイン達について、シナリオを振り返りながら語っていきたいと思う。


○琴梨
主人公の従妹ということもあって、序盤からかなり近い距離感で事が進んでいく。琴梨と琴梨の母と主人公の三人で過ごす時間は本作の大きな見所の一つだと思う。一緒に食卓を囲んで、話して、笑って...まるで本当の家族のような温かい空間広がっていた。近すぎるが故にどうやって恋愛関係に持っていくのかなと思っていたが、母子家庭という境遇を絡めながら上手く持っていってくれたと思う。

お兄ちゃんと慕いながら、時たま成熟した女性のようなムーブをかましてくる琴梨ちゃんが本当に魅力的で、そのギャップに何度もやられてしまった。特に函館の夜景を見るシーンは印象深くて、見た目は少女だが、しっかりとした女性であることがよくわかる。また、鮎ルートでは鮎の想いを汲み、主人公と二人きりで過ごさせてあげたりと、常に周りを気にかけた行動をしてくれる点も彼女の魅力だろう。8人の中で良い女を一人選ぶのであれば彼女になるかなと思う。


○薫
北海大学付属病院に勤務している研修医で、実は主人公が一番はじめに出会うヒロインでもある。見た目通りのクールで聡明な女性で、ヒロインの中では最も攻略が困難に思えた。が、主人公から命を助けられたことで一気に距離が縮まっていく。

距離が縮まっていく過程こそ少々雑に思えたが、彼女自体は大変興味深く、読み進めれば読み進めるほどに好きになっていった。何かと理屈っぽい発言が目立ち、趣味を見ても24歳とは思えない彼女だが、距離が縮まるにつれて実はすごくピュアな女の子らしい心を持っていることがわかる。「一般論として年上が好きか」を主人公に問うシーンなんかは彼女らしさが溢れていてとても愛らしい。極めつけは「一人じゃ出来ないもの」。なんだあんた、めちゃめちゃ乙女で可愛いじゃないか...。


○ターニャ
最愛の父を亡くし、義父にその思い出を壊されたため単身来日し、一人で生きることを選んだ少女。彼女の境遇を知った時はもう本当にきつかった。どうにか彼女の仕事が上手くいってほしいと、気付けば恋愛などそっちのけで彼女のを応援する気持ちばかりが膨らんでいた。

持病の設定があったので重い話になっていくかなと考えていたが、そんなに重い話にはならず、むしろ彼女の大切にした読後感の良い話が描かれていた。苦しんできた彼女がようやく救われ始める、そんなお話を読んで何も感じないわけはなく、ただただ嬉しかった。本当に琴梨母の功績が大きすぎる。不満を挙げるとすれば義父との問題だろう。個人的には不自然に義父と和解するよりは、主人公と二人で生きる未来を掴み取ってほしかった。


○葉野香
目が悪いわけでもないのに眼帯をつけている少女。男兄弟の中で育ったせいか口調がやや粗めで、何かと反抗的な態度をとる。けれど、根は素直ないい子で、自分でももっと素直になりたいと考えている。とまあ私の好きな要素を固めたような女の子で、プレイ中はその可愛さに悶絶してばかりだった。兄のラーメン屋を手伝っているのもポイントが高い。

夏編を経て、恋心を自覚するともう彼女の可愛さは止まらない。雪を踏みしめる音を「寂しい」と表現した後に「でも一緒だと温かい」と漏らしたり、主人公の存在が自分を変えてくれたと嬉しそうに語ったり。そして告白シーンでは照れながらもはっきりと「好き」と伝えてきたり...もう心臓が弾けて消えそうになるほどに彼女が愛おしかった。今を楽しく過ごすだけでなく、好きだからこれからもずっと一緒にいようと、東京の大学を目指し勉強し始めるのも、彼女の想いの強さを感じられていいなと。言うまでもなく私にとって作中ナンバーワンのヒロインだった。





いかんせんシステムが古い&厄介なので辛い時間がなかったと言えば嘘になるけれど、その何倍もの幸せを与えてくれた。たくさんの笑顔をありがとう。