個性あふれる魅力的なキャラクターたちとそれを活かした物語。それでいてシナリオの出来も良く、最後まで満足感を保ったまま駆け抜けられました。
メインキャラからサブキャラ、果てはモブキャラまで余すことなく各々が独自のキャラクターを持っていて、共通√は勿論、メインの話の合間に挟まれるちょっとしたおふざけ会話のようなものまで楽しませてもらいました。既読文章はスキップできるのですが、キャラの掛け合いの見たさから飛ばさない時もありました。特に隼人視点の会話が好きで、YFBのやつらもそうですが、隼人が好きなんですよね。あの性格、態度が良いキャラしてますし、一匹狼で強キャラっていうのもいい。そりゃ亜衣も惚れますわ。
この作品、残念ながら攻略対象ではないものの、亜衣が非常に可愛いんですよね。バリバリのギャルなのに隼人が香水が嫌いとか、爪は短い方がいいとかぼそっと言うと次に会う時にはどれも改善してきてる。この作品で一番乙女らしかったのではないでしょうか。それに加え嫉妬心や未練はあるものの、隼人と付き合う女とも積極的に仲良くしようとする。こういう良さを出すためにもサブキャラという配役は適していたと思います。鳴√エピローグの「ばかやろー、早くフラれちゃえ...」からの「いつまで待てばいいんだよ...」は切なかったですが...。
個別√は個々のヒロインとの恋愛ストーリーだけでなく、実質グランド√である小鳩√も丁寧で良かったです。以下個別√ごとに感想を述べていきます。
・明日香√
学園一の美少女というポジションの裏には悲惨な過去が。一人きりの部屋に閉じこもり、自分の作った架空の友達と話し続けてきた。でもそんなことがいつまでも続くわけなく、やがては大人になって一人で生きていかなければならなくなる。明日香が鷹志を救ったのではなく、理解したというのがミソなんです。鷹志だけでなく明日香も救われた。お互いに拠り所となる相手を見つけたという実に恋人らしいお話でした。明日香のジト目で冷静なツッコミをするのが好きでした。
・京√
テンションの上がり下がりが激しくよくヘラる。BADが忘れられない。
・日和子√
日和子は素が出るたびにどんどん可愛くなっていった印象を受けました。自分の好きな話題になると我を忘れて必死に食いつく。人付き合いが苦手なタイプの典型で見ていて微笑ましかったです。この√は彼女の可愛さも勿論素晴らしいのですが、英里子がいいキャラしていたと思います。よく日和子に突っかかる英里子ですが、嫌いなわけではないんですよね。むしろちゃんと彼女の出した本を読んでたり、駄目な所は正そうとしてくれたり、友達として壁は作りたくないだけなんです。それに対して何も言い返さないから傍から見たらイジメてるみたいに見えるだけで。この辺のいざこざを最後に日和子が初めて今まで抱えていた気持ちを英里子にぶつけるという形で消化したのがよかったです。
・鳴√
この√はわりと抗争が激化していて、プラチナが死んだとか言われた時は結構ショックでした。まあでも実は死んだのは元凶の方だったりして安心したのですが。プラチナくん、嫌味ったらしいキャラに見えて全然嫌みに感じないし、むしろ規制する時はちゃんと友達してて好感度上がりまくりだったんですよ。で、この事件のトリガーとなったのが和馬というオチ。やってることは幼稚なんですがまあ和馬気持ちもわかります。自分が慕う皇帝様に好かれ、自分が好きな女にも好かれ、挙句の果てにはそれが原因で泣いてる彼女を慰めることすら許されない。恨み辛みも溜まりますよね。隼人の優しさのおかげもありますが、ちゃんと誤ったのが良かったです。そしてその後ハメられたにもかかわらず、ヒリュー相手に和馬を庇おうとする隼人はもっとかっこよかった。
・小鳩√
セカンドOPが流れこれが実質グランド√と言わんばかりにボリューミ―な内容になっていました。各√のヒロインだけでなく、YFBやヒリュー、柳木原のみんなとの掛け合いを大切にしつつ、物語の終局へと向かっていくのは見事でした。多重人格もグレタガルドも妹のために生まれたモノであり、鷹志の小鳩を想う気持ちが描かれていました。やはり家族愛は素敵ですね...。この√、エピローグではまさかのプレイヤー側も多重人格のうちの一人という形で締めくくられており、驚きながらも自然と納得できて、「ありがとう、いままで導いてくれて、俺たち全員から礼を言わせてくれ」という言葉には「こちらこそありがとう」の言葉しか見つかりませんでした。
どのお話でもキャラが腐ることがなく、ネタでしかないだろというようなモブキャラとの会話も面白い。まさに楽しめる作品になってました。俺たちに翼はないこともないのかもしれない。