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asteryukariさんのアウラルと光の竜 ~Gathering Light~の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
アウラルと光の竜 ~Gathering Light~
ブランド
みむいむ
得点
83
参照数
225

一言コメント

あたたかい光たちに囲まれながら歩む旅路は、幸福そのものだった。彼女らと過ごした時間をいつまでも覚えていたい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


モンスター娘達がメインキャラクターの王道長編RPGということで、目にしたときにすぐ自分の好みに合いそうだなと感じた。惹かれたのは主人公がモンスター娘を率いるのではなく、主人公自身もモンスター娘な点である。

主人公のアウラルはアルラウネの娘であり、自身のことを「おばちゃん」と呼ぶ。彼女は長寿系のアルラウネであり、年齢的には48歳とのこと。おまけに剣術に長けている。それだけ面白そうな面白そうな要素が見つかれば興味を持たないはずもなく、始めて数分くらいで彼女の事が好きなっていた。

彼女の魅力は何といってもその余裕と優しさを持ち合わせた性格にある。どんな場面でも冷静且つ真摯に行動し、困っている者は人間だろうとモンスターであろうと見捨てない。まさに正義を体現したようなキャラクターであり、進めていて好感度が上がるばかりだった。

特に序盤のリエラとのエピソードは印象的で、彼女への理解も深まる。物語の始まり終わりまで、リエラがアウラルのことを「お義母さん」呼びしているのが凄くいい。ここだけ切り取っても一つの作品を作れそうなくらいには好きな関係性である。


そんな魅力溢れる主人公の下に集まってくる仲間たちもまた魅力的な点が本作を大好きな理由である。もうどのキャラクターが好きかなんてぱっとは絞り込むことができない。共に戦う仲間たちは勿論の事、登場回数の少ないサブキャラも、サブのサブと呼べる存在までもが良いキャラしているのだ。その辺について語りだすと長くなるので、個々のキャラクターに関する感想は後述する。

最高の仲間たちと出逢いながら、立ちはだかる敵を倒し進んでいくアウロラたちなわけだが、火山に行ったと思ったら今度は空や海に…と本当に山あり谷ありで前進していくので、冒険が常に楽しい。今度はどんな娘が仲間になるのだろうと地図で新しい場所が表示されるたびにワクワクした。

また、キャラクター同士の会話が多めな点も本作の良いところで、訪れる地域に合わせて何気ない日常会話をみんなで交わす時間があったり、出会いは最悪だった二人がいつの間にか仲良くしていたり、本当に眺めているだけで幸せになれる。

物語が大きく動き出すのは中編にて魔王アスタルーナと出会うあたりで、黒の魔獣を操っている黒幕の正体が見えてくると同時に、物語も一層盛り上がっていく。面白いのが黒幕が現れたのでみんなで協力して倒しました…にならない点で、一度アウラル一行は敗北する。しかも今まで皆をまとめてきたアウラルが真っ二つにされ、行方不明になるという苦しい展開まで用意してくるから恐ろしい。14章のタイトル「闇に覆われる世界」がいろいろな意味合いでピッタリである。

で、アウラルを見つけて即リベンジとはいかず、闇に蝕まれたアウラルの心を解くべく、今までは触れてこなかったアウラルの過去と内面に踏み込んでいくという運び。とても嬉しい。そこに至るまでにアウラルの自己肯定感の低さが気掛かりだったので、ようやく繋がったかと。

アウラルの過去編はもう喜怒哀楽がぜんぶ顔に表れてしまうような内容で、言いようもない満足感に包まれた。前編でなぜリエラを助けたのか問うセレに対し、「誰かに認められたり、好きになって貰えるかもしれないから」とアウラルは言っていたが、この過去を踏まえた上で改めてあの台詞を咀嚼すると、また違った味わいが生まれる。


すべてを取り戻し、迎える最終決戦が楽しくないはずもなく、終章に突入した時の気持ちの盛り上がりは最高潮だった。少しに気になったのはバルガスら敵幹部及びアレクスが最後まで小者だった点。魔王の立ち回りも、もう少し尺を用意してあげれば自然なものになったかなぁと。予想はしていたけれど展開が少し早く感じた。

ただまあ、気持ちが盛り上がっていたのは最後まで同じで、とどめの一枚絵も非常に良かった。この作品、凄いのが立ち絵だけでなく、一枚絵がちょこちょこ用意されているのだ。ゲームも作って、お話も作って、立ち絵だけでなく一枚絵も何枚も書いて…作者さんには本当に頭が上がらない。


エンドコンテンツとなるEX編も適度の難易度で、やりこみを期待していた身としては嬉しかった。最後にバグみたいな性能の装備をもらって思わず笑ってしまった。

ゲーム性について少し触れると、難易度は全体を通して易しめで、苦戦する場面はほとんどなかった(EX始めてすぐの時は驚いたが…)。戦闘は敵のHP、有効な属性や状態異常が表示されているし、雑魚戦は確実に逃げられる。フィールド操作は快適で、某国民的RPGのような読み手を楽しませるギミックもあったりする。総じて遊びやすいゲームだったと思う。


とまあこんな具合で存分に楽しんでプレイさせていただいた。最後にお気に入りのキャラクターたちについて、個別に感想を述べていこうと思う。

・シェニ
「持ってる力の使い方を考えて、道を選べるんだ」
「あたしぃは、そんなきのこになりたいなって思うよ」

三人が二人目に会うきのこちゃんで、グレンにきのこをぶつける。出会った時は自身が心を持つきのこであることをマイナスに捉えていたが、物語が進むにつれてどんどん成長していく。見た目も喋りも愛らしい彼女だが、この成長こそが彼女の最大の魅力だと私は思う。


・テテピ
「たのしくゆかいな ゆうれいせん~♪」
「きょうもげんきに たんけんたい~♪」

ハーピーの娘で、ドジっ娘属性持ち。いかんせんムードメーカーしかいないようなチームなので影は若干薄めだが、新鮮なリアクションと愛らしいセリフの数々が私の心を掴むことも多々あり、印象深いキャラクターだった。戦闘でもかなりお世話になった。実は恋愛に興味津々なのがカワイイ。恋愛漫画とか読んでいそうだ。


・アスタルーナ
「信じていただけて…皆さんの仲間に入れていただけたみたいで…私ったら、涙が…」
「そわそわ…(早くグレンさんとデートしたいなぁ…♡)」

現魔王であり、実は世界を変えた功労者の一人でもある。彼女の決意がなかったら、おそらく人間と魔物との溝は埋まらなかったのではとすら思う。パーティには入れられないし、なんならEXでは戦う羽目になるけれど、仲間であることに変わりはなかった。それにしてもグレンとあのような関係になるとは思わなかった。アルラウネクイーンといい、やはり狙っておる。どうか幸せになってほしい。


・セレ
「1000年つまらん時を過ごしたのも、その為だったと思えば短いもんなのじゃ」
「そうじゃ!わしらは2人で”光の竜”なのじゃ」

最初はなんだこのマスコットはくらいの気持ちだったのに、進めていけばいくほどに愛着が湧いてきて、アウルラを失った時は読みの手の声を代弁してくれるかのように悲しんでくれて…アウルラにとって最高のパートナーだったと思う。キスまでしたのは流石に驚いたが、アルラウネの特性を聞いたときに危ない言葉を零していたので、まんざらではないのだろう。非18禁でなければ…非18禁でなければ…。


・アウラル
「居場所があるって、誰かと繋がってるって」
「こんなにホッとすることなんだね…」
「私が探し続けていた──求めて止まなかったモノに…」
「あたたかい光たちに出会わせてくれました」

本当に最高の主人公だった。逞しくて優しいだけでなく、14章を経てからは肩の力が抜けて凄く人間味溢れるキャラクターになってくれた。特に終章の仲間たちに向けた演説は印象深く、彼女こそがリーダーでよかったと心の底から思った。彼女に出会えたことを誇りにすら感じる。


出会ってくれて、ありがとう──。