絶望からの立ち上がりが丁寧に描かれており、読むのが非常に楽しかった。新登場のキャラクター達がしっかりと馴染んでいる点も嬉しい。
波旬信長が誕生し、久遠は行方不明。剣丞は記憶喪失...と絶望に絶望を重ねたような状態で物語はスタートするわけだが、故にとても面白かった。記憶を思い出すまでの流れも違和感はなく、また記憶を失った彼への周りの接し方も実に良かった。早く記憶を思い出してほしいと願う者から、記憶を失っていようと自分の愛した人に変わりないと微笑む者、腑抜けた剣丞に喝を入れる者など...本当に様々な愛のカタチがあった。
今作からの登場となる渚・潮も良いキャラしていたなと。EXシリーズでは正直、新キャラの扱いが雑で好きになることがないどころか、嫌いになってしまうケースがあったりしたのだが、今作ではそれがなかった。記憶喪失の主人公を支える存在で終わらず、頼りになる仲間として活躍し続けてくれた。溶け込み方も自然で、結菜や他のみんなとも仲良くやっているのが凄く嬉しかった。
ただ、それでも今作で一番光が当たっていたのは美空だろう。波旬信長に怒鳴るところから始まり、お家流が使えなくなったにもかかわらず前線で戦い続け、技と頭脳を使って敵を圧倒する。さすが関東管領!...では済まないほどの活躍っぷりを見せてくれて、改めて彼女のことを好きになった。敵を煽りに煽っておいて、戦いになったらしっかり勝つのが本当にたまらない。
お家流を取り戻すまでの流れも綺麗で、完全に主人公になっていた。個人的に貞子が泣いてくれるのが凄く嬉しくて、記憶を失った主人公に対する態度といい、絆菜を足止めするシーンといい、美空の陰で密かに株を上げていたキャラクターだと思う。えっちの時に暴走してしまうのはご愛敬。
戦いが一段落ついた後も美空の正妻パワーは勢いを失わず、そのまま最後まで突き抜けていく。ようやく迎えた久しぶりの夜の営みの時間、強気に攻めていくのかと思いきや、めちゃめちゃ女の子を出してきてひっくり返った。
「ゆっくり優しく...抱いてほしいの」
こんなの死人が出てしまう...強くて逞しいだけでなく、女の子らしさも持ち合わせている。この無敵の女に、他の奥たちはどうやって立ち向かうのだろうか。本当に石ころの中に隠れている場合じゃないよ、久遠ちゃん。
軽く振り返ってみても、やはり美空の存在が強く脳裏に焼き付いていた。今、人気投票をしたらぶっちぎりで彼女が一位をとってしまうのではないだろうか。毘沙門天の化身は伊達ではない。
EXシリーズの流れを汲むのであれば、次は一葉様が出てくるのだろうか。いや、大好きなので是非出してほしい。まあ、何にせよ新章第一弾は良い出来だったので、第二段にも期待したい。