こぢんまりとした内容ではあるが、話と話の繋ぎは丁寧で、最後まで読み応えがありました。気になる部分もあるけれど、自分が好みの要素も散りばめられていたので、気持ちとしては満たされたかなと。一貫して透が好きでした。
久しぶりのライアーで、しかもシナリオは自分の中でかなりホットな方が担当されるということで、プレイするのが楽しみで仕方ありませんでした。舞台設定もそそるものが用意されているので、購入者も多いのではないかなと思います。
さて、読み切った感想ですが、作品としては中々良かったのではないかと思います。過去編を挟みながら、少しずつキャラクター同士の因縁が明らかになっていくのは面白いですし、ヒロインと主人公だけではなく、登場人物全員に華があるのも素敵です。何より錦戸透という素敵な女の子との出逢いが大きかったです。
蛟との話が一段落した時点の評価としてはぼちぼちくらいで、悪くはないけれどパンチが弱いと感じていました。たしかに過去の繋がりが現代まで続いているというのは、面白くなる要素ではあるのですが、現代編のお話がイマイチ盛り上がりに欠けるというか、弥太郎の使い方もかなり雑で正直読んでいて感動は生まれませんでした。
ただ、そこから錦戸透の話が始まるのであれば話は別です。過去編でも随一の輝きを放っていて、ぶっちゃけると志津香よりも断然、透の方が好きでした。そんなわけで彼女メインのお話が始まった時は天にも昇るような心境でした。
錦戸透編はまあライターさんの色が出まくっているお話で、まさに本番はこれから!と言わんばかりに透軸のドロドロなストーリーが展開されていきます。
「好きな…好きになりたいって、そう思えた人に…存在を、受け入れて、もらいたい…。」
最後の選択肢で派生するBAD√でも言っていた通り、彼女の願いは徹頭徹尾兄さんと結ばれることで、それを叶えるためならばどんな化物になってもいいとまで口にしていました。そんなことを言われたらまあもっとぞっこんになってしまうわけで、気付けば彼女の細く脆い希望を叶えてほしいと思いながら読んでいました。無論、叶わぬと知りながら…。
そんなわけで最後、願いが叶ってしまったことについては少しモヤも残りましたが、大好きだった彼女が幸せを掴んだという意味では悪くなかったと思います。この辺を前作で上手くやっていたから余計に気になったのですが、好きは好きです。
あとは美純が「抜け駆けは許さない。…私、負けないから。」と言ってくれたのは嬉しかったですね。これにはきっと透も空の上で微笑んだことでしょう。ヒロインの勝ち負けにこだわるのではなく、登場人物全員を愛しているのがひしひしと伝わってきて、心が和みました。
加えて二番目に好きなキャラクターは誰か聞かれれば間違いなく飛鳥だったので、彼も最後まで一緒にいてくれた事実がただただ嬉しかったです。純粋なヒロイン力勝負で彼に勝てるキャラクターはいないと思います。それくらい魅力的な存在でした。飛鳥と二人で海外旅行するなんて結末が見られたら、恐らく飛び跳ねて天井に穴が開いていました。
といった具合で全体としての完成度、面白さが抜けていたわけではありませんが、自分好みのパーツが揃った一作だったように感じます。散々触れた透なんかは、まさに自分が本作に期待していた存在で、読みながら嬉しくなりました。ライターさんが次作もライアーで作品を出すのか、それとも別のブランド出すのかわかりませんが、これからも応援し続けると思います。また素敵な悪霊…女の子を生み出してほしいものです。