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asteryukariさんの毒舌悪魔とムッツリ天使との四畳半暮らしの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
毒舌悪魔とムッツリ天使との四畳半暮らし
ブランド
Waffle
得点
73
参照数
707

一言コメント

ヒロイン二人の存在が非常に魅力的であり、彼女たちの小競り合いを眺めているだけで楽しさが生まれていた。主人公を前に出し過ぎない点も良い判断だと思う。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想



労働によって心身共に疲労している冴えないサラリーマンの男性が主人公であり、そんな彼の目の前に一人の悪魔が現れることで物語が進行していく。導入自体はよくある感じで、悪魔と天使が主人公の精液をめぐって取り合いっこしていくのだろうなと。実際に読み進めていくとその通りの内容になっていたのだが、思った以上に会話劇が面白い作品に仕上がっていた。

まず良かったのがヒロイン二人のキャラクターがしっかり立っていることで、てっきり主人公にばかり毒舌なのかと思っていたライラちゃんは、シルフィアちゃんにもしっかり毒を吐いていて、シルフィアちゃんはシルフィアちゃんでがっつり淫乱なむっつり女だったのが凄く嬉しかった。特にシルフィアちゃんについては序盤のキツイ女上司役が異常にハマっていたのもあって、その急降下過ぎる乱れっぷりが映えたなと。いろいろと理由を並べつつ、真性の変態なのがとってもいい。

次に良かったのが主人公が目立ち過ぎていない点である。本作の最大の魅力はHシーンや恋愛パートではなく、ヒロイン二人の掛け合いだと思っている。そんな二人を主人公がなだめたり、変に正義感を振りかざすことなく、あくまでサレ役として立ち回ってくれたのが実に素晴らしかった。

裏を返すと主人公にしては情けないないのだが、そこはライラちゃんがしっかりとカバーしてくれるし、そんなやりとりが挟まれることで一層彼女に対する好感度が上がるわけだ。毒舌で自己中な一面もある彼女だが、実はとっても優しくて温かい。お母さんにするなら彼女一択だろう。対するシルフィアちゃんはというとピンク頭の世間知らず…なのだが、だからこそライラちゃんとの相性は抜群だった。

後半の堕天パートはまさに二人の関係性の美しさが際立つ場面であり、本作をプレイしてよかったと感じた部分でもある。シリアスになりすぎずに最後は笑顔で終わることのできるようにしてくれたのも英断だったなと。ちなみにシルフィアENDの方が好みだ。なぜならライラちゃんは紛れもない天使なのだから…。

最後といえばエンディングでヒロイン達が振り返りを行うのも個人的には好きだったなと思う。尺がそんなにある作品でもないので、懐かしさは薄めだったけれど、最後まで仲良しな二人を見せ続けてくれるのは気分がいい。バチバチだったけれど、それ以上に仲良しだったのだと、それを改めて読み手に理解させてくれた。

泣けるほどに感動する作品でもなければ、シーンを凄い頑張っているわけでもなく、そのどちらかに期待を抱いて読み進めると物足りないかもしれないが、私はそれなりに満足のいく作品だったかなと。またこんな和む作品が読みたい。