悪い意味で優しい作品になってしまったなと。ただ、想定外の内容でもなかったので、労いの言葉は送りたい。
一作目から一年半ほどを経て最終作を迎えた本シリーズ。一作目、二作目共になかなか面白く、三作目も結構ショッキングな展開を用意してきたりと、シリーズものとしてはかなり頑張っていた。だが、やはり三作目プレイ時に予感していた通りの幕引きになってしまったなぁと。
最終作が復讐を軸にした物語になることはわかっていたので、キャラクターの動きも不快感はないし、着々と進んでいく復讐劇の準備を眺めていて悪い気もしなかった。辰也の裏切りも一作目から追ってきた身からすれば違和感しかなく、けれどもそんなバレバレな王道展開に心の奥底で期待している自分がいた。
故に辰也が期待通りの動きをしてくれた時は思わず笑みが零れた。驚きはないが、やはり気持ちのいいものは気持ちいい。辰也の行動の前後の琴子の反応も、時間が生んだ信頼関係が垣間見えていいなと。前作もそうだったが樹含めたこの三人の繋がりがとても好きだ。
で、見事に復讐を果たして終わり…だったらまあ凄く面白かったとは言えないものの、無難に仕上がったなという感想を零していたのだが、本作はまた更に一手間加えてきた。これが私としては不要だったなと思う。
これまで裏社会に足を踏み入れつつも、なんとか助かってきた甘ちゃんな樹くんが最終作でついに…!そんな展開は予想外だったので、ここにきて甘さを捨てるのか!と本気で少し心を昂らせたのだが、だからこそ落胆した。あのまま終わったら少しは筋の通った作品として名を残すことができたろうに、結局はそのチャンスも優しさで消してしまう。
まあ、ライターさんらしいといえばそうなのだが、筋を通すふりをしたのは憤りも生まれる。せっかく無難な作品として読み終えようとしていたのに、そんなことをされたら評価を落とすしかなくなってしまうだろう。しかもエピローグがかなり短いので、エピローグの時間だけでモヤモヤが解消できず、終わった後もずっと残ってしまう。正直、読後感はかなり悪かった。
ただまあ、これまでそれなりに楽しんで追ってきた身としては、上記の不満だけでシリーズ全体を否定する気もない。懸念していた凛の存在感の薄さも、本作でそれなりにカバーできていたように感じる。男性キャラが好印象なキャラばかりだった点も評価したい。
何はともあれ一先ず完結という形を迎えられて良かったのではないかなと思う。長い間、お疲れ様でした。