ErogameScape -エロゲー批評空間-

asteryukariさんのハルジオンは雨と咲くの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
ハルジオンは雨と咲く
ブランド
『縋想』プロジェクト
得点
72
参照数
100

一言コメント

序盤から中盤にかけての話の動かし方が丁寧で、読みながら高揚感を覚える瞬間が多々あった。展開に不満はあれど、まとめ方は悪くないし、脇役の立て方も上手だったと思う。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

大学を舞台にしたそこそこレアな作品で、謎多き女学生「結夏」との出会いをきっかけに主人公の未来が大きく変わっていく。読み始めて一時間程度経ってすごいなと感じたのは、その丁寧な進行具合である。結夏と知り合いそのまますぐ付き合い始めるのではなく、リアルな学生生活を送りながら、ほかのキャラクターとも関係を育みながら時間が経過していくのがいいなぁと。

千鶴と綾乃はいわばサブヒロインなのだが、二人ともかなり良いキャラしていて、引き立て役としてではなくヒロインとしてのパワーを持っていた。特に千鶴は主人公が憧れているだけあって凄く魅力的だった。他と比べて大人で仕事熱心だけれど、家では気が抜けていて女の子らしい仕草も見せてくれる。そんなの好きにならないわけがない。


物語は結夏の失踪を機に大きく動き出して、謎が謎を呼ぶ内容になっていく。正直、結夏に対する感情が薄かったのもあって、彼女の行動に謎というか少し不快感を抱きながら読み進めていた。やっぱり千鶴の方が魅力的だし、無意識に主人公のことを追っている千鶴を見て胸が締め付けられた。文化祭のシーンなんかは切ない。


終盤の種明かし及びやりとりに関してはハッキリ言ってしまうと好みとのズレを感じてしまったが、一方ですべてがイマイチだったかというとそうではない。結夏を救うための立役者となった結月と、親友の岡本がとても自分好みのキャラクターになってくれたからだ。結月はまあずるいポジションで、最後まで優しさの塊みたいな女の子だった。最後の姉妹のやりとりは本作で一番好きなシーンである。

で、岡本はもうお前がヒロインでいいよと言わんばかりの献身っぷりで、途中まで好感度ナンバーワンだった皐月を軽く抜き去っていった。それまで主人公は女に恵まれていると思っていたが、全然違ったのである。主人公もそれをしっかりと理解しているのがまた嬉しい。この二人で語らうシーンがもう少しあったりすると、一層好きな作品になったかもしれない。






振り返ってみると致命的に合わない部分こそあったものの、一貫して脇役の動かし方がうまかったなぁと思う。逆に言うと主人公と結夏にはあまり魅力を感じなかったので、そこをもう少し何とかしてくれると尚良かったかなと。何はともあれ処女作としては悪くないで出来だし、これからに期待できる内容だったと思う。陰ながら応援しています。