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asteryukariさんの刹那にかける恋はなびの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
刹那にかける恋はなび
ブランド
CRYSTALiA
得点
70
参照数
716

一言コメント

物語としては物足りなさも残るが、看板ヒロインだけでなく、脇役にも魅力的な人物がいたのは嬉しい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


刃道シリーズ最新作ということで、まずは帰ってきてくれてホッとした。そして今作のヒロインは朱雀院家四姉妹最後の一人というのがこれまた気分が上がる。めくいろ、ゆれあか共に好きな作品なので発売前から期待は高まるばかりだった。


今作の主人公は先に述べた二作とは異なり、れっきとした刃道競技者で、刃道を通じて他のヒロインと親交を深めていくことになる。これがまず結構嬉しくて、ありがちな実は凄腕の剣士という設定もまた厨二心をくすぐる。少し前の時代に流行った主人公のタイプだ。

ヒロインは三人で、剣士二人サポート一人とバランスも良い。本音を言えば全員剣士でも良かったが、小鞠ちゃんの立ち位置がかなり美味しかったので不満はない。プレイ前はまあ序盤から撫子ちゃん一直線なんだろうな等と思っていたが、いざプレイしてみると小鞠ちゃんの妹力の高さにたじたじだった。


ほぼ一本道だったゆれあかとは違い、それぞれに個別ルートが用意されているわけだが、これが成功だったかというと正直、微妙なところである。というのもそれぞれがかなり薄味&物足りなさが残るシナリオになっていたのだ。当然、撫子ルートは他の二人より力が入っていたのだが、抜けて面白かったかというと、そういうわけでもなかったのが残念。

撫子ルートをやっていて特に気になったのが他試合のおまけ感である。トーナメント方式で強者たちを下し、最終的に撫子と戦うというのがざっくりとした話の流れなのだが、もう本当に流れるように勝っていく。先にも述べた通り、主人公はかなり強い設定なので勝っていくのはまあ納得なのだが、読み手が納得できるような強さはあまり見せてくれなかった。

演出面は頑張っていたが、テキストやシナリオが追い付いていなく、場面によってはそんな光っただけで勝てるのか笑と思う瞬間もあった。なので主人公周りの設定をもう少し掘り下げてくれると嬉しかったかなと思う。

また、上記の影響で番付が全く意味を成していない点も気になる。厨二モノの作品好きなら目を輝かせるであろう、強さの序列。最強格だと思った相手が実は四番目くらいで、さらにその上がいる。そんな心躍る光景が本作でも見られるのかと、序盤はかなりうきうきだった。しかしながら、いざ読み進めてみると番付外無双で、一位のいぶきすらも意外にあっさりと倒される始末。九曜にいたってはなぜその席に座っていられるのか疑問すら生まれた。

あとは個人的な願いを言えば旭ちゃんを一位の座に置いてほしかったかなと。ゆれあかで彼女が好きだったユーザーであればそう思うだろう。異常なまでの努力家で、朱雀院を超えるために今も戦い続けている。そんな彼女を撫子とぶつけてほしかった。ただまあ、どう足掻いてもまた噛ませ犬的な立ち位置になってしまうことは回避できないので、朱雀院に負けなかったという事実は彼女にとってちょっとした救いなのかもしれない。


とまあ、そんな具合で多くの試合を不満気な表情を浮かべながら眺めていたのだが、唯一ニーナ戦だけは悪くなかった。剣士でアイドルで、そんないかにも噛ませなキャラクターだったので、試合が始まった際はまあサクッと勝つのだろうなと思っていたのだが、作中の全キャラクターの中でも一二を争うほどにしっかりと感情を乗せて戦ってくれて、試合が終わる頃にはかなり好きなキャラクターになっていた。声の配役もばっちりで、まさに「ニーナ!最高ッ!ニーナ!最高ッ!」である。

あとはメイもわかりやすくユーザーが好きになりやすいキャラクターしていて良かったと思う。退場のさせ方が少し雑で唖然としてしまったが、まあ無理やり納得するしかない。撫子ちゃんが超強かったということで...。





といった感じでそこそこ不満も連ねてしまったが、良い部分はいくつかあって、また撫子ちゃんも最初から最後まで可愛かったのでプレイして後悔したなんてことはない。ただ、やはりゆれあかの方が格段に面白かったなと。ルートに関しても個別ルートを用意した関係で相手方のキャラクターがブレまくったり、刃道要素が薄まったりしていたので、やはり一本道の方が良かったのではとも思う。

まあ、それでも前シリーズよりはマシだったので、これからもまた刃道を歩んでいってほしい。