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asteryukariさんのぴゅあぴゅあの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
ぴゅあぴゅあ
ブランド
KLEIN
得点
83
参照数
88

一言コメント

優しさの恩返しが詰まった、実に温かい一作だった。完成度は決して高くないが、私は大好きな作品だ...。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ゲームを起動した瞬間にケモノ娘が出迎えてくれて、自分望んだ物語がその先にあることを予感させる。ケモノ娘はジャンル的にかなり好きで、純粋無垢さを残した彼女達と触れ合うことは勿論、段々と乙女らしくなっていく様も実に良い。というわけで本作に対しても可愛い耳っ子(本作におけるケモノ娘)がいればいいやくらいの気持ちだったのだが…想像していた以上に私好みの作品に仕上がっていた。


まず驚いたのが序盤。ルート派生する間もなく「さち」という耳っ子と恋仲になるのも予想外だったが、その後の展開は更に...。久しぶりに悲劇から始まる物語というものに遭遇した。ふわふわでもふもふな世界が広がっていると思ったらまさかの激重スタートに多少心配にもなったが、その後のケアが本当に良かった。

彼女の死から二年の月日が経ち、すっかりやさぐれてしまった主人公。主人公は終始ネガティブというか頭が悪いというか、とにかく魅力が光るなんてことはないので、そこで見切りをつけてしまうユーザーもいるかもしれない。しかし、そんな彼だからこそ、周りの存在が輝いたのだと私は思う。

親友の「潤」をはじめとし、妹の「美和」、そしてかつて共に時間を過ごした耳っ子「ひなた」と、次々に彼を支える存在が登場する。彼らがもう本当に優しくて、優しくて…彼らの気遣いを見る度に少し涙が出そうになった。

特に潤に関しては主人公だけでなく、美和やひなたにも働き口を提供してくれて、しかも店長だからと言って決して大きい態度はとらない。主人公が飛び出さなければならない状況にあれば、迷わず主人公を送り出すし、主人公がさちのことを思い出して落ち込むようであれば、たとえ業務中であっても優しく接してくれる。いつも笑顔を振りまいて、悩みごとがある時は真剣な表情で相談に乗ってくれる。本当に素晴らしき親友であった。

エピローグでは耳っ子たちと幸せに暮らしている風景ばかりが映し出されるが、その幸せの裏で頑張っていたのは間違いなく潤である。彼というキャラクターに出逢えたことがまずは嬉しかった。


また、主人公を支えてくれた存在がもう一人いる。それがヒロインのとばりだ。とばりはひなた達と同じく耳っ子で、はじめは中々扱いずらいタイプのように見えるが、実はとっても優しい性格をしている。単独行動が目立つ彼女だが、なんだかんだ誘いは断らない。そんな所も含めて大好きだ。

潤や美和と違い、主人公が落ち込んだ際は叱責する形で彼を励ましていたのが凄く素敵で、支えてくれる人と後押ししてくれる人に囲まれている主人公が改めて羨ましくもなった。確かに悲劇は体験したけれど、それ以上の優しさが彼を包み込んでいたのだ。

そして、とばり√では受けた優しさを返すべく、ようやく主人公が行動を起こし、彼女のことを幸せにしてくいく。これが本当に良くて、優しさの連なりにまた涙腺が緩んだ。結局、とばりのご主人様への願いは届かなかったり、終盤はやや早足になっていた感は否めないが、それでもとばりの喜びは本物だったと思う。ちなみに結末としては三人エンドが一番好きだ。




振り返ってみるとやはり作品の構成がドンピシャだったなと。悲劇から始まった物語だけれど、最終的には悲しみの涙ではなく、喜びの涙を流せる。そんな話運びが実に良かった。この作品をプレイできて本当に良かった。