読めば読むほど盛り下がっていくような作品だった。愛らしいヒロインが揃っているからこそ一層残念な気持ちになる。
スラム育ちの主人公が上流階級たちの集う学園に通うことになるという中々にそそる導入で、登場するヒロインもメインからサブまで容姿端麗の美少女ばかり。わりと癖強めな女の子が多めな点も嬉しい。こやつらとどのように仲良くなって恋愛物語を作っていくのかが非常に楽しみになった。
そういった意味でも共通は楽しんでプレイできていて、ぐいぐい来る女がいると思ったら集団で踏みつけてくる女がいたりと、個別シナリオへの期待値もぐんぐん上がっていた。しかしながら、個別√派生すると描かれていたのは甘く幸せな恋愛とは程遠い、不純物で満ちた悲しい世界だった。
以下ルートごとの感想
▽トウリ
主人公とともに孤児院で育った妹分で、学園にやってきた理由も愛するお兄ちゃんをサポートするため。明るく優しい雰囲気の彼女だが、育った環境のためか意外に度胸があって言いたいことはずばずば言ってくる。誰がどう見てもできた妹だった。
そんな彼女のルートは四人の中だとダントツで酷かった。何が酷かったって、共通部分ですらおなかいっぱいで吐きそうになっていたあの豚君と陰湿眼鏡のストーリーを再展開してくるのだ。もう心の底からどうでもいいし、なぜこれをトウリちゃんのルートでやるのか、トウリちゃんに惹かれていた身としては怒りを通り越してただただトウリちゃんが可哀想だと思った。
▽くくる
理想のオートマタ作りに真剣な無感情ヒロイン…かと思いきやわりと感情的でそれが愛らしい女の子。最初の主人公への好感度は恐らく誰よりも低く、主人公との関わりを持ち始めたのもオートマタが理由。
そんな癖ありのヒロイン故に恋人に至るまでの過程もまあまあ屈折しているのだが、一回抱いてしまってからはただの可愛い女の子になっていくので、そんなネガティブな感情は芽生えることがなかった。全体を通して起伏がなく、オートマタも最後にパパっと完成するので、読み応えなんかは皆無だが、テーマ故にファイブちゃんの出番も多く、最後もほっこりする終わり方をしていたので嫌いではなかったかなと。
…ファイブちゃんとのイチャイチャファンディスクとか出してくれませんか?
▽イヴ
顔がめちゃくちゃにイイ女で、スタイルも抜群。おまけに運動神経も抜群で、ぐいぐい来るタイプときたらメロメロにならない男はいません。裏があるのかと思いきや個別√派生した後もただただイイ女で、四人の中では最も一般的な彼女とのデート風景を見せてくれる。初えっちがパイズリスタートなのはもう絶対にイイ女なのだ。
物語終盤に差し掛かると楽しくいちゃいちゃな時間は終わりを告げ、若干のシリアス展開を迎えるが、展開が好みかはさておき、汐莉の言っていることがわりと正論ばかりで笑ってしまった。結局イチャイチャしながら片手間の努力で汐莉に勝ってしまうのは残念だが、おまけの内容を見ると二人の対決はこのくらいにしておいた方がいいのかもなとも思う。
ちなみにあのコスプレは最高でした。ありがとう。
▽奏命
女王様の名が似合う少女で一見、攻略難易度は高そうだが、序盤から主人公への好感度は高めなので女王様の意のままにしていたら結ばれた感が強い。嬉しかったのは最初から最後まで女王様でいてくれた点で、弱ることなく気概を示し続けてくれた。えっちの時も最初は彼女主導で始まることが多くて嬉しい。
あまりにも彼女が強いので展開こそ動きずらかったが、そうやって強いヒロインを描き続けてくれるのは願ってもないことなので、私としてにはなかなか満足のいくお話だったかなと。また、側近の北条姉妹の存在もかなり気に入っていたので、奏命様が彼女たちをないがしろにしたりせず、いつまでも横においてくれたのが嬉しかったなと。姉妹が奏命様を大好きなのはもちろん、奏命様もあの姉妹のことを大切に想っているのが伝わってきて、幸せな気持ちになった。
振り返ってみるとまあ全体的に薄っぺらさが目立つが、一部のルートには好きな要素が詰まっていたりしたので、すべてがすべてダメだったわけではないかなと。ただまあ、本当にみんな可愛いので全員を幸せにしてあげて欲しかったというのが本音だ。