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asteryukariさんのクリミナルボーダー 3rd offenceの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
クリミナルボーダー 3rd offence
ブランド
Purple software
得点
75
参照数
1011

一言コメント

よくやってくれたなという思いと、無難な方向に舵を切ったなという思いが半々。ありふれた作品にならぬよう、丁寧に面白くまとめてくれることを期待したい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

今回はいよいよ危ない臭いしかしないメリルちゃんがヒロインのお話ということで、まあこれまで以上に危ない橋を渡ることになるだろうなと思っていたが、読み進めていくとメリルが人間らしい感情を獲得していくというかなり優しめのストーリーが用意されていた。

えっちに対する抵抗もなくて、むしろメリル側から誘ってきたりと、まさに幸せな日常切り取った光景が次々と映し出されていたのである。中盤に差し掛かる頃には、今作はもうメリルちゃんを愛で楽しむ作品なのだろうと思い始めた。

そんなわけでいきなりやってきた悲劇を打ち返せるわけでもなく、ゆっくりと読み進めんがら目を見開いていた。メリルと一緒にいる以上、殺しの現場を見たり、死体処理をしたりはするだろうと思っていたが、ここまで容赦のないことをしてくれるのは驚きであり、歓喜の出来事であった。というのも裏の世界に首を突っ込んでいながら、上手く行き過ぎだと常々感じていたのである。

たまたま電子ドラッグを手に入れたガキがこんなに好き放題していて良いのかと、話を盛り上げるためとはいえヤクザ側が甘くないかと思っていた身としては、凄く納得のいく出来事だった。ようやく境界線を越えてくれたなと、作品を見る目が大きく変わった。


ただ、同時に作品が辿るであろう道筋が見えてしまったのも事実で、この先も心を躍らせながら読み続けることができるのか少し不安になった。言ってしまえば、ありがちな方向に話を持っていったなと。また、登場人物の心情描写も、もう少し丁寧に書いてくれると嬉しかった。メリルはさておき、凛が加勢するのは若干不自然に感じてしまったのだ。仲が良かったのは理解しているが、ここに至るまでにもう少し準備ができたのではないかなと。どうしてもポッと出感があった。



といった具合で手放しには褒められないものの、やってくれたことに対する驚きと喜びはあるし、ただヒロインが可愛い作品で終わらなくてホッとした。あとは今回の件で辰也君がもう完全にヒロイン達と同格の存在になってくれたのも地味に嬉しい。この先、男二人で思い出語りや墓参りなんかのシーンが差し込まれたらきっと泣いてしまうだろう。

ルカについてはまだまだ謎だらけで堀り甲斐があるし、樹や辰也と違って琴子は肉親を殺さなければいけない立場なのもよくよく考えてみると面白い。何はともあれ次作に期待したい。