楽しみにしていたルートが期待通りの出来で、幕の下ろし方も違和感の残らないものだった。彼女たちと過ごした時間をいつまでも覚えていたい。
ようやく完成版が出たということで、VER2.0をプレイした時点で本策に期待を寄せていた自分としては、まず無事に完成してくれた事実がとても嬉しかった。ただの青春学園モノではなく、ほんのり苦みを残しつつ読み手の心を揺さぶってくれる。同人ノベル界でこういった作品が出てきてくれるのは本当に嬉しい。
さて、完成版となる本作では既存のルートに加えて、沙希ルートと実質グランドルートとなる楓Bルートが追加された。グランドルートは勿論のこと、沙希に関しては共通ルートや他ルートをやった段階でかなり好印象なキャラクターだったので、ルートの追加が純粋に嬉しかった。
で、沙希ルートをプレイしてみた感想としては、沙希というキャラクターを一層好きになれるようなシナリオが用意されていたなぁと。ルート分岐したことで今まで以上に会話する機会が増え、彼女が実は意外とグループの事を考えて動いていることがわかる。ただいつも巻き込まれているわけではなく、彼女自身もあのグループが好きなのだと、そんな感情が様々な場面で伝わってきた。
今いる世界が楓の願った世界だとわかった時も、夏向と一緒にいるその状況を愛おしく思いつつも、そんな恋愛感情以上にみんなの事が大好きだからこそ、自分の想いを優先したりはしない。
「やることは決まった。
この世界を出て行こう。
これは逃避ではない。
楓に夏向を譲るためでもない。
現実の世界で、もう一度みんなで集まれるように。」
決して作品の良い部分を削らない、あまりにもパーフェクトな答えを提示してくれて、思わず頬が緩んだ。自分の信じた女の子が、信じた以上に魅力的で素敵な女性になってくれた。その事実がただただ嬉しかったのだ。それでいて別れの際はしっかりと「そして、私は何度でも夏向君のことを好きになる」なんて心臓を打ち抜いてくるような台詞を投げてくれる。私にとって、まさに完璧で究極のヒロインだった。
続いて楓Bルートについても触れてみると、まあ無難に良いまとめ方をしていたかなと思う。まとめのお話なので、他ルートほど力を入っていないように感じたが、変に話を展開したりしなくてホッとした。また、沙希ちゃんが宣言通りに大活躍していた事実がわかるのがとても嬉しかった。勉強熱心に見える研究者が、実は友達のために研究者になっただなんて、素敵すぎるでしょう。あとは雛那ちゃんとの別れの一枚絵はきっと誰が見ても良いと唸ることだろう。本当に良い子ばかりの揃った作品である。
追加ルートに望んでいた以上のものを詰め込んでくれて、このあまつそらに咲くという作品のことを一層好きになることができた。処女作でこの出来なら、次作の制策が発表されても何の心配もなく購入できるかなと。
改めて素晴らしい作品をありがとうございました。