ネタ作品かと思いきや、しっかりパンチの効いた物語になっており、想像していた以上の満足感があった。パチンカスの末路を描く、その文章に嘘偽りはなかった。
発表があった時から気になっていた作品で、そのユニークすぎるタイトルとあらすじが私の心を掴んで離さなかった。気持ちを昂らせながら「はじめる」を押下すると、パチンコ屋からスタートする時点で既に面白かった。
新米パチンカスのギンタローが一人の女性と出会うことで物語は恋愛アドベンチャーとして進行していくのだが、パチンコ要素はしっかり残っていて、台選びがEND分岐になっていたり、ヒロインのご機嫌取りになったりしていた。演出もパチンコの演出に似せたものがしっかりと用意されていて、某親父との一件では大いに笑わせてもらった。「777」で想いが通じ合うのも完全にふざけてて好きだ。
ヒロインのゆりあは序盤こそ大人びた女性に見えるが、実際は心の脆い女の子である。悲劇のヒロインのように過去を語り出すが、かなりブレがある。故に主人公と結ばれた後も若干の不安が付き纏っていた。主人公にデレデレにはなったけれど、またすぐ心が揺れて関係が崩れるのではないだろうかと。そして、その不安は的中した。画面に亀裂を入れる演出がまた憎いほどに上手い。
驚いたのが彼女ではなく主人公が原因で別れることになってしまった点で、パチンコに熱を注ぐあまり関係が崩壊するという救いようのないパチンカスらしい結末だった。しかもこの結末がTRUE END。幸せな恋愛物語ではなく、まさにパチンカスの末路を描いた物語として締めくくってくれたのだ。これが個人的に凄く嬉しくて、自分の中で本作に対する評価がグンと上がった。煙草に関しても皮肉が効いていてお洒落だし、ゆりあはやはり思った通りの軽い女の子なのが辛くて悲しくて…非常に嬉しい。
パチンコのお話だと思ったら恋愛物語…なんてことはなく、やっぱりパチンコのお話。そんな真性のパチンカスが興味本位でプレイしたら悶え苦しんでしまうような内容だった。だからこそ面白かったし、こういった方向に舵を切れるのは同人の強みだとも感じる。CHARONさんはビターな結末の作品が多かったりするので珍しくはないが、今作は特にその特色が生きたように感じる。
また、パチンカスは勿論、ギャンブラーであれば共感できる点が至る所に散らばっているのも本作の魅力の一つかなと思う。生粋のギャンブラーたちがプレイしたらどういった感想を抱くのか、とてもとても気になる。
何はともあれ楽しい時間を過ごさせてもらった。ありがとう、パチンカス。