時に傷付け、時に傷を舐め合う。その歪な関係を見ていること自体は苦ではなかったが、内容はやはり薄めに感じた。もう少し読む楽しさがほしい。
物語は水商売の世界で冴えないホストをしていた「都忘勝郎」と自暴自棄なバツイチ婚活アラサー女の「待雪四季」の出会いから始まる。序盤はホストと遊び人な女の恋愛といった形で比較的に綺麗に進んでいくわけだが、そのままゴールインなんてことはなく、浮気と復縁を繰り返しながら物語が進行していく。
肝となるのはこの「繰り返しながら」という部分で、基本的に喧嘩しては浮気して、また仲直りしてイチャイチャして…を最後まで続けるので、正直読み進めていて面白くはない。また、ボリュームもそこそこある(同日に同ブランドから発売されたパチンカスロードの倍ほど)ので、苦痛のあまり悲鳴を上げてしまう人もいるだろうと思う。
喧嘩した後に四季から貰ったお金を他の女に使ったり、四季に他の女の話をしつつさりげなく浮気をなかったことにしようとしたり、その辺の屑さ加減は見ていて面白くて、中盤までの主人公に対してはあまり不快感を抱いたりはしなかったのだが、四季と一緒に創作活動を始めるあたりからは見ていられなかった。
努力もしないくせにプライドは高い。おまけに根性もない等々、屑に屑が肉付けされていくような感じで、まあ久々に見ているのがしんどい主人公を引いたなと。そして、そんな彼に縋り続ける四季もまた見ていられなかった。こいつらは何をやっていて、この作品は何を見せているのかと、そんな事を思いながら読み進めた。
結末もハッピーエンドにしなかった点は好感が持てるが、あの結末を見て心が揺れるなんてことはなかったのでモヤは残った。ただまあ、この作品らしい結末を迎えたとは思うので、違和感などはなかったかなと。あくまで好みから外れていただけで、悪い作品ではなかったと思う。
振り返ってみるとやはり致命的に合わなかったのだなと。同ブランドのヤンデレ系作品なんかは好きだし、面倒くさい女も嫌いではない。だからこそ何とか楽しみながら読もうという気持ちで読んでいたのだが、彼らが繰り返せば繰り返すほどに心は沈んでいった。全体的にもう少し自然な起伏の作り方をしてくれると嬉しかったなと思う。