愛らしいヒロイン達の揃った作品ではあったが、読み進める楽しさはあまりなく、唖然としてしまうこともしばしば。ただ、最後まで読み切って良かったと思える部分が少しは存在したので、全てが駄目な作品ではなかったのかなと。
ヒーローに憧れていた青年が正義のヒロインと悪の組織の闘争に巻き込まれる。そして、その出来事をきっかけ主人公自身も正義のヒーローとして、ヒロイン達と戦っていく…と。そんな導入故に、共通・個別√問わず戦闘シーンが用意されており、共通√では主人公が力を覚醒するまでの過程が、個別√ではヒロインと主人公の共闘が描かれている。
まずはその戦闘描写がどうだったかというと、正直なところ面白くはなかった。というのも基本的に主人公サイドがあまり苦戦する場面がなく、また敵側の反応も小者そのものなので、イマイチ盛り上がらない。もっと言えば戦闘の全てが茶番劇になっている。作風からして燃えゲーではないことは明らかだとしても、個別√のメインは共闘だったりするので、もう少し盛り上がりを生んでほしかったというのが本音である。
また、テキストも結構ギャグチックなので、序盤こそ「ダサいなぁ」と思いつつ、そのダサさを楽しみながら読んでいたのだが、それを最後までやってくるのでいい加減笑えなくなってしまった。ヒロイン同士の戦いなんかは、その適当さに見ているのが恥ずかしくなる瞬間もあったりして、なぜこんなものを読んでいるのかと我に返ってしまうことも。話運びが上手であればこんなところに意識が向くことはないのだが、まあ上手ではなかったので…。
そんな感じでキツイ部分は存在したが、では恋愛モノとしてはどうだったのかというと、これもまた良かったとは言えない。まず言っておくと、ヒロインのビジュアル及び性格は好みの子がしっかりいた。特に初見から印象の良かった桃代と、その特殊な立場から何かと見せ場が多い雪朱ちゃんについては共通√の時点でかなり好きだった。
個別√は基本的に身体を重ねることで関係が深まっていく作りで、ヒロインは個別√に突入すると一気にドスケベになる。善く言えば面倒臭いことをすっ飛ばしてすぐにえっちできるのだが、悪く言えば初体験が非常に雑。共通√で心の底から好きになったヒロインなんかがいるとあまり気分は良くないかもしれない。
で、終盤はヒロインと力を合わせてアークナーを倒そうという流れになっていくわけだが、冒頭にも散々述べた通り、やっていることが非常にショボいので気持ちが乗らない。それぞれのルートで気合の入った一枚絵を用意してくれるのだが、それを見て「おお!」となることはなかった。
といった具合で四人を攻略し終わった時点では絶望しかなかったのだが、最後に開放される桃代√は、世界観の拡張とドンについて、そして臨時管理人の正体が明かされる。そのため初めて「おお!」となる瞬間が訪れるのだが、簡素な文章で事実がつらつらと書かれ、熱くなると思われた主人公同士の戦いも立ち絵でサクッと終わるので感動等はなかった。そこで盛り上がらなかったらどうするのだと声を大にして言いたいが、まあ一瞬だけ熱は上がったので加点だけはしておこうと思う。
振り返ってみるとやはり軽いノリで進んでいったので、物語の方も軽いまま終わってしまった感じで物足りなさが残る作品だったなと。凄い期待をしていたわけではないが、想像していた内容より少し下だった。ただ、上記でも述べた通り、桃代√は若干の盛り上がりがあったので、そこの評価によって作品の評価も大きく変わってくるかもしれない。何はともあれ最後までやってみて本当に良かった。次作はもう少し面白いシナリオが用意されていると嬉しい。