キャラクターの意志を大事にしつつ、読み手に仄かな温かさを残していってくれる。追ってきてよかったと心の底から思えるような素敵な幕引きでした。本当にどいつもこいつも愛おしい…。
神の国の魔法使いシリーズついに完結という事で、長かったような短かったような。EP1の時は考えもしなかった方向に話が分岐していき、この先どうなっていくのかわくわくしながら読んでいたが、読み終えた今振り返ってみると実にねこねこらしい良さが詰まった作品だったなぁと。
CHALLENGERとWIZARDが交わり、やがて一つの結末に向かって物語が進行し始めると、あとはもう止まらないといった感じで勝手に読み進める手が動いていった。#08は印象的で、あんなにふわふわして優しい女の子だったサツキが、一気に大人びてしまって最初は少し戸惑った。けれど、回想を挟みながら彼女の本音が見えてくると、あとはもう彼女に対する想いが膨れ上がるばかりで、託された者として前を向く彼女にただただ見惚れていた。
「魔法使いに、なりたかったわけじゃない…」
涙を零しながらも魔法使いとして、歴史を変える者としてやるだけやろうと決心した彼女は本当に逞しかった。これはこれまで魔法使いを諦めた者、逃げた者を見てきたからこその感情だろう。歴史を変える者、そして本作の主人公はサツキであるとそれを目の前で突き付けられたような感覚だった。彼女の意思を尊重して、「さよなら」を残してエンディングに入ってくれるのは流石ねこねこといったところ。しっかりと意志を持ったキャラクターを生み出し、シナリオでそっと後押ししてくれるのが本当に嬉しい。
魔法使い候補だった他の二人、カガミと小梅もかなりお気に入りのキャラクターで、彼女達の気持ちが交差する終盤はやはり見応えがあった。歴史が変わらないこと、それを彼女達の視点で見てきたからこそサツキを止めようとする小梅や、もはやどうでもいいと思っているカガミの気持ちは痛いほど理解ができて、読んでいて非常に面白かった。そして、そんな二人が一緒に旅立つのが凄く良い。めんどくさがりに見えて、その実かなり面倒見のいいカガミ先生が大好きだ。
エピローグも私好みで、問題を解決しようと躍起になるのではなく、小さな感動とほんのりとした温かさを残そうと意識して作ってくれたのが本当に嬉しかった。もうユニコロが見えた瞬間涙が出てしまったし、相変わらずドロドロなアイスをあのA子に「結構好きだよ」と言わせるのだからずるい。ねこねこのこういった小さな仕掛けが大好きでたまらないのだ。
終盤は若干駆け足気味で、恐らく物足りなさを感じたユーザーもいるかと思う。しかしながら、ねこねこソフトというブランドが好きであれば間違いなく刺さる作品に仕上がっていた。海外進出しても自分の色を失わずに突き進んでいってくれるのはファンとして本当に嬉しいし、これからもついていこうと強く誓った。改めて素敵な作品をありがとうございました。