「子種が欲しいだけ…」、ただそれだけでどこまでも突き進んだ阿婆擦れの醜くも可笑しい物語。
迷子を助けてもらった事がきっかけで結婚に至ったという二人。しかしながら主人公は種無しであった。超名門一族の一人娘という立場もあり、どうにかして夫との間に子を授かりたい。そうして彼女が出した答えは夫と同じ遺伝子を持つ彼の親族から精子提供を受けることだった。
はじめこそ少し抵抗を見せる場面もあるが、基本的にはヒロインがノリノリでえっちして、主人公がそれを見て性癖を拗らせていくという流れである。精子提供相手というか不倫相手の主人公の父と弟がまあいい感じに気持ち悪くて、名家の娘が汚くて金もなさそうな男達の言いなりになっている事実も含めて中々にそそるシチュエーションの揃った作品だったと思う。
面白いのが先にも述べた通りヒロインこと琴子がノリノリな点であり、精子の為に仕方なくと身体を差し出すのではなく、喘ぎながら言い訳として「子種の為に…」と零す点である。まさにド淫乱の阿婆擦れ女だ。主人公に対しても隠すどころか同じような言い訳をするのが中々イカれている。特に印象深いのは母親とのやりとりである。
「あと少しだけ…猶予が欲しいの…っ!」
「今月中に結果を出しなさい...。今月の子作りで結果が出なければ無理矢理にでも離婚させるわ」
仕事の話のノリで不倫精子の着床チャレンジ延長を頼み込んでいて、吹き出してしまった。
主人公も主人公でまあまあ狂っていて、彼女を受け入れるのは勿論、自分のせいだと彼女を擁護するような発言をする。なるほど確かに優しい性格をしているなと、序盤に琴子が語った夫の魅力が皮肉にも一致して少し面白…悲しくなってしまった。弱者男性はいつまでも弱いままなのである。
ボリュームもそんなになく、目新しさもないが、期待していた通りにしっかりヒロインが屑で、主人公の方もしっかり弱い男性だったなぁと。読み進めていて面白かったし、琴子の少しずれたビッチ発言の数々には何回か笑わされえた。誰の精子を受精したかわからない、けれど念願の子宝に恵まれたのだからそんなことはどうでもいい。そういって喘ぎ続ける彼女はまさに私が望んだ通りのおもしろ女さんだった。