新しい物語を用意してくれたことがまず嬉しいし、その内容が本編以上に自分好みだったのも嬉しい。ハッピーライヴショウアップという作品を見る目が変わるような、素敵な一作だった。
本編ヒロインのアフターシナリオ+ミヤビルートといった感じの内容になっており、アフターシナリオに関しては基本的にシーン+ちょっとした日常会話程度でボリュームもかなり短め。あくまでヒロイン達との再会を喜ぶくらいの気持ちで楽しむのが吉かなと。アフターシナリオを読んでそこからミヤビルートへという動きをとったのもあり正直、アフターシナリオを読み切った時点での本作に対する評価は高くなかった。
しかしながらミヤビルートを読み進めていくと、本編で不遇な扱いを受けていたミヤビにしっかりとスポットライトの光が当てられ、ヒロインらしく輝き始めるではないか。また、ただヒロインとして昇格させ、主人公とイチャイチャさせて終わりではなく、彼女を通じて主人公にも変化が表れ始めたのが良いなと。一時間程度読んだ時点で本作に対して抱いていた絶望は希望へと変わっていた。
学園に入学し、他者とのコミュニケーションには問題ありながら練習を楽しそうに続ける彼女は眩しかった。そして、それと同時に懐かしさも...。そう、本編のヒロイン達もまた彼女と同じような時間を過ごしていたのだ。まあ半分くらいは天才肌で苦労せずに結果を出している少女もいたけれど、主人公と寄り添いながら夢を叶えようとしたのは皆同じである。今度の挑戦者はミヤビなのだと思うと、自然と頬が緩んだ。
先にも述べた通り主人公に変化が起きた…つまり魔法を再開させたというのも大きな肝であり、今作品をより面白い読み物へと昇華させてくれた部分だと私は思う。仲間たちがステージを見に来てくれる点も含めて凄く良かった。衣装を用意させるのがペチカなのも実に嬉しい。信頼できる相手だからこそ、勝負服を任せられる。本編を読んでいるからこそぐっとくるものがあった。
そして、主人公が魔法を再開したことを喜ぶ者たちの中で、傷付く者がいるのもまた…いや、これが本作を好きになった一番の理由だと言ってもいいかもしれない。あんなに魔法を嫌っていた、自分では彼を変えられなかった。それなのに今は魔法に向き合って、一人の男として成長を遂げている。「大丈夫になったんだよ」に対して「なってほしくなかった」と顔を歪ませる彼女を見て胸が締め付けられるような思いをした。
素晴らしいのがここで彼女に配慮したり、慰めたりするのではなく、しっかりと置き去りにしたままにしてくれる点。気付くことができなかった、勇気をもってアプローチすることができなかった、そうやって一人で傷付き、彼女もまたそこから変わろうとしてくれる。これがもう本当に嬉しかった。
本編の彼女は泣いたら助けてもらえた。けれど今作はそうではないのだ。自ら過ちに気付き、自らの足で立ち上がってくれた。こんなのはもうたまらない!そのまま失恋をバネに世界の魔法使いのトップにまで上り詰めてしまうのも、決別するかのようにバッサリと髪を切ってしまうのも…すべてが大好きだ。
加えてその過程を主人公は知らないというのも満点の返しだなぁと。そう、主人公はミヤビを選び、ミヤビと共に歩むことを決めたのだ。ソフィヤは勿論、カーチャやルーも傍にはいない。…けれど、繋がっていることはわかる。そんなハッピーライヴショウアップらしく明るい幕の下ろし方をしてくれたのも素敵。
振り返ると改めて自分好みの作品に仕上げてくれたなと。無印よりも圧倒的に好きな作品になってくれた。ただ、無印があったからこそ好きになれたのも事実なので、本当にこのアンコールを作成してくださったスタッフさん達には頭が下がるばかりである。
素晴らしい作品をありがとうございました。