王道なストーリーと丁寧な心情描写が力的であり、話を追うごとにキャラクターたちを好きになっていった。ゲームバランスもかなり良いので、全体的によくできていたなと思う。
主人公が吸血鬼(かつては魔王と呼ばれるほどの実力だった)+二刀流とかいう男の子の好きを詰め込んだようなキャラクターで、ヒロインは可憐な村娘。その時点でもうシナリオの路線が何となくわかってしまうが、そうなったらむしろ私の大好物だったので、期待に胸を高鳴らせながら臨んだ。
グラフィック及びBGM、システムが一新されているということで今回はRebirth版をプレイしたが、その判断は間違っていなかったように思える。なぜならガラッと変わったという戦闘パートがとても面白かったからだ。
戦闘パートの何が良かったというと、まずはそのテンポ。サクサク動くし、そのわりに演出もしっかりしている。ここはまあツールの力なのだが、とにかく快適で仕方がなかった。敵は序盤こそタフに感じるが、終盤は雑魚的サクサク、ボス接戦な丁度いいバランスで作られていた。
で、次に良かったのが使い魔というシステム。コア・オブジェクトを集めることで使い魔を召喚することができ、しかもソーサリーと呼ばれるアイテムで召喚時のステータスを調整できるときたら、もうソーサリー集めが捗ってしまって捗ってしまって....2,3時間ほどソーサリー集めに没頭していた。私なんかは白い牙という序盤のワンコロを大切に育てていたので、普通の人以上に楽しんでいた自身がある。
唯一の不満点というか、これはまあ根性が足りないだけなのだが、もう少しドロップ率が優しいとよかったかなと。武器コンプを目標にしていたりすると、「なんで白玉、黒玉を連れ歩いているのに...」と天を仰ぐ瞬間が多々あった。しかし、だからこそ目当てのアイテム、素材を拾えた時の感動は大きかったので、やはり弱い自分が悪いのである。
といった感じでゲーム性についてはほとんど文句がなく、純粋に楽しい時間を過ごすことができたなぁと思う。
次にシナリオについて触れていくが、まずは私好みの路線で走り続けてくれたことにお礼を言いたい。人間なんて何の価値もないと思っていたレヴィエルが、ルナという少女と関わり、段々と人間味を帯びていく。実に王道的なストーリーだが、変わっていくレヴィエルの心理が物凄く繊細に描かれているので、予想できるから面白くないなんて言葉はどこからも飛んでこないはずだ。
また、中盤でルナが使徒化するのは予想外だったので、かなり度肝を抜かれたし、そんな捻りを加えつつ、捻って終わりではなく、より胸に沁みるストーリーを作るスパイスとして活かしてくれたのが非常に良かった。彼女の優しすぎる心が作品全体に広がり、レヴィエルだけでなく、様々なキャラクターの魅力を引き出してくれたのである。
そんな具合でレヴィエルとルナの関係性は言うまでもなく自分好みであり、二人の迎える結末も含めてよくできていたと思う。村で一緒に暮らすなんて未来も悪くはないのだが、レヴィエルというキャラクターを意識すると、それでは不自然すぎるのだ。故に彼らしく、この作品らしい判断をしてくれたことに感謝したい。
そして、本作で良かったのはレヴィエルとルナの主人公陣営だけではなかった。敵として彼らの前に立ちはだかったカオスとシルフィールの関係もまた、彼らと同じかそれ以上に私の心に刺さったのである。
「全ての物語が...ね。ハッピーエンドになるとは、限らないんですよ...。」
レヴィエルと同じように人間を愛し、寄り添うことに幸福を覚えていたカオス。けれどその幸福は失われてしまったし、この先も失われたまま。切ない台詞だけれど、裏を返せば今でも彼女のことを想っているからこそ出る台詞であり、カオスというキャラクターを一層好きになった場面でもあった。後にシルフィール経由で楽しそうにレヴィエルとルナの話をしていた事実を聞くともう涙が込み上げてくる。シルフィールが特別ルナに優しく接していたのはきっとそういった背景も大きく関わっているのだろう。
で、シルフィールなのだが...最終的に作中で最も好きなキャラクターになってくれた。何が素晴らしいって本当にどこまでもカオスを想っている点だ。代わりとして作られた存在にもかかわらず、カオスの唯一の理解者としてあり続けようとする。
「私の物語は、ここから始まり。そしてここで、終わる。」
「世界が広いというのなら、一人くらいはそんな愚か者がいたっていいんじゃないですか?」
周りがどれだけ説得しようと彼女の選択は変わらない。彼女はそんな自分を愚か者と笑っていたけれど、私は見事に心を掴まれてしまった。
振り返ってみるとやはり登場人物達が魅力的だったなと。なんだかんだブレイブクリア、武器コンプまでしてしまったので相当ハマっていたことは言うまでもない。楽しい時間をありがとうございました。