すれ違い、やがて心を通わせるまでが丁寧に描かれており、読めば読むほど少女達のことを好きになってしまう作品だった。雪華文様の方にもっと尺を割いてくれると尚良かった。
2022年に放送されていたアニメ「プリマドール」の前日譚となる作品。アニメの方はリアルタイムで視聴していたが…癒されるけどおもしろさはなかった。ただ、ノベルゲームになったことで心情描写や表現の質が上がることを期待してプレイ。
今作で用意されているのは「冬空花火」と「雪華文様」の二つであり、それぞれアニメ換算で三話から四話分くらいのボリュームで作られている。
まず冬空花火について触れていくと、まあ灰桜ちゃんが可愛かったなと。「人のお役に立つ自律人形」をモットーにどこまでも健気で、どこまでも優しく接してくれる。灰桜ちゃんのファンとしてはリリアの行動に逐一眉をぴくぴくさせていたけれど、灰桜ちゃんの喜怒哀楽がたくさん見られたのでまあ満足かなと。またアニメではお歌が好きな彼女だったが、その部分にもしっかり触れられていたのが嬉しい。
次に雪華文様について、こちらはシンプルに読み物として面白かった。戦闘人形に嫌悪する少女と元戦闘人形の少女のお話。理解されようと努力する鴉羽はつい見ていて応援したくなるし、助けてもらった事ですぐ心を開くローサは年相応で愛らしい。
「う、ううん、違わないわ…あたしたち、仲良しになったものね」
はじめはバチバチだったのに、いつの間にか姉妹のように仲良く談笑する二人を見て心が温かくなった。シナリオの構成もなかなか良くて、偵察用機械人形との一件を挟むことで、次に鴉羽がとる行動がとても自然なものになっていた。義務だからとか、戦闘人形だから戦うのではない。「守りたい人のために戦う」、そう言い切れるようになった彼女を見てとても心が満たされた。
ローサもローサで素直になれないガキンチョではなく、ちゃんと謝れる良い子ちゃんだったので、この話は読んでいて終始良い気分だった。本音を言えば良かったからこそ、尺がもう少しほしかったが…まあ冬空花火よりは格別に面白かったと思う。
全体的にテキスト化されることで心の機微が繊細になったのは良かったかなと思う。アニメを知っている知らないにかかわらず、自律人形という題材に興味を持ったユーザーであればそれなりには楽しめるはずである。
最後に...月下ちゃんが一番好きなので、彼女の前日譚も何らかの形で出してくれると嬉しいです...。たい焼きのエピソードとか...お願いします。