よく言えば綺麗なお話、悪く言えば残るものが少ないお話であったが、冷めることのない作りにしてくれたのは良かったと思う。欲を言えばもう少し日常を噛みしめたかった。
ランプにしては珍しくロープライス作品でシナリオライターも別の方…と思ったらスミレとコラボレーションしているらしい。舞台は人と妖との戦いが終わった800年後の時代。不死の呪いを背負う少年と、短命の業を背負った少女の出会いと別れを描いた物語である。
戦いが終わって800年後、おまけに一月にも満たない期間の物語ということで、ボリュームはかなり控えめ。登場人物も上記の二人のみなので、どちらか一方のキャラクターが合わなかったりすると厳しいものがあるかもしれない。特にミコトなんかは常にネガティブな感じで、カッコいいところを見せるところもなく終わる。主人公らしくない男なので。
私の場合はサクラというキャラクターの事を気に入っていたので、何気ない日常シーンでも笑みを浮かべながら読み進めることができた。余命いくばくもないにもかかわらず気丈であろうと、主人公の負担にならまいとする姿勢がとても良かったなと。また、キャスティングも抜群だったと思う。あの方は業を背負ったヒロインの演技が凄く良い。
途中で物語の結末は見えてきて、主人公の心境がどうなるかまでわかってくるわけだが、不自然な展開にはせず幕を下ろしてくれるのは嬉しい。この辺はライターさんらしさが出ていたかなと。彼女との出会いに感謝し、彼女の分まで生きていこうとする。最後の最後によいやっと主人公が変わることができた綺麗なお話であった。
そんな感じで物語自体は綺麗だったが、いかんせん溜めが短いので、あまり胸に響いてこなかったというのが正直なところ。長ければいいというものでもないが、二人の関係を良いなと思えるようなエピソードや、日常の積み重ねなどがあればもっと感動的な物語になったのかなと思う。ライターさんは好きなので、また機会があればランプでもスミレでも書いてほしい。