ようやく話が動き出しただけでなく、彼女達と過ごす時間を愛おしく思えるようなエピソードも詰まっていた。温かさで包むような作りでありながら、線引きはしっかりしている。ねこねこの良さが随所に表れた一作だった。
前作ではサツキちゃんが成長したところで終わっていて、ボリューム的にも内容的にも物足りなさが残ってしまったが今作は違う。公式からも言われていた通りボリュームは前作の二倍近くのものになり、話がだいぶ動いた。嬉しかったのがただ動かすのではなく、動かす中でしっかりと読み手の心を揺さぶる描写や先が気になる部分あった点。
前半部分では成長したサツキちゃんと共に日常を過ごしながら、村の発展と保護に努めていく。ここまではEP1と同じなのだが、今作ではサツキちゃんが本当の意味で主人公の仲間になる…つまりは魔法使いの道を歩む過程が描かれている。魔法使いになったとはいえ、やっぱりわからない事だらけなので足を引っ張りがちだけど、めげずに声を張りながら頑張る彼女がとても愛おしい。
そして、魔法使いになる道を選ぶ一方で、選ばなかった人間もいる。
「魔法使いには、なれないにゃん」
彼女の回答を目の当たりにした時、自然と喜びの涙が沸き上がってきた。そう、姫はそういう女性だったと。主人公達と共に過ごし、取引相手から明確な友人とも呼べる間柄になった。それでもこんな決断をしてくれる。だからこそEP1の時から目が離れなかったわけで...。
誘いを断った後にすぐさま「実は私、来春に婚姻するんですよ」と言い始めるのなんか実に彼女らしくて…。本当は寂しくてたまらないはずなのに、それでも枷にならぬよう、送り出す者としての役目を果たす。どこまで真っ直ぐないい女なのかと、読みながら涙を零していた。こういうキャラクターが描けるあたり、ねこねこソフトはまだまだ大丈夫だろう。
その後にタイトル画面が変化するところもまた…。サツキが魔法使いとして歩み始めた時とは違う、別れの仕草。ああ、もう切なくて、嬉しくてたまらないだろう。EP2を経て村の住民たちに愛着が湧き始めたところでこれだ。見事に泣かされてしまった。
そして、忘れてはならないのがもう一つの勇者と魔法使いのお話。Wizardシナリオ。唐突に始まったにしては引き込み力がえげつなくて、場面によってはメインよりも面白く感じる場面があった。まず小梅とランの関係性がずるいなと。
話の展開もメインよりだいぶ攻めたシナリオになっていて、故にとても引き込まれた。彼女が過去に何を体験したのか、二人の迎える結末は…。カガミのつぶやきといい、ようやくメインが動き出したと思ったら、他の角度から次々と気になる要素ぶっこんできて思わず笑みが零れた。
振り返ってみるとEP1とは比べ物にならないほどに面白く仕上がっていたなと思う。別れを経て、歩み始めた三人はどのような道を辿っていくのか、またWizard編がメインとどのタイミングで絡むのか。気になる事だらけである。EP3の公開がいつになるのか不明だが、公開されたら即やりたいところだ。