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asteryukariさんのアマカノ2+の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
アマカノ2+
ブランド
あざらしそふと
得点
82
参照数
1887

一言コメント

相変わらず面倒臭くて、重くて…けれど、そんな彼女が私は大好きだった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


グラフィックだけでなく、シナリオでも見事に私の心を掴んでくれた前作「アマカノ2」の続編。前作で恋人関係になった三人のアフターストーリー+新規ヒロインの4つのルートが用意されている。アフターと言ってもいちゃいちゃして一時間程度で終わるような内容ではなくて、ヒロイン達の性格及び癖に合わせたストーリーが用意されていて、満足感は前作とさほど変わらなかった。

結灯ちゃんが大好きだった私としては、一刻も早く彼女のルートをプレイしたかったのだが、我慢に我慢を重ねて最後までとっておいた。そして、その判断は正しかった。「アマカノ」シリーズを堪能するのであれば、咲来を最後に回した方が良いかもしれないが、「黒姫結灯を愛している」ユーザーであれば、迷わず彼女を最後に回すべきである。少なくも咲来→結灯の順番で読んだ方が、一層彼女への愛が深まることだろう。

自身のルート以外の結灯は猫を被っているのは勿論、今作では髪を切っている。で、ちとせと玲ルートではあくまで仲のいい友人として、ヒロインにしてはあまり目立たず主人公と接するわけだが、咲来ルートは違う。彼女に自分を重ね、「できたかもしれない自分」として咲来の恋を後押ししてくれる。この時の少し陰りのある表情を見せる彼女が、まあ美してくて、同時にそんな彼女を最後に幸せにできる事実がただただ嬉しかった。この感覚を味わえるのは、この順番で攻略した者のみである。


で、彼女のルートに突入すると思った通り黒髪ロングのままでいてくれて、本編の時以上に幸せな表情を浮かべながら主人公との日々を過ごしくてくれる。これだけでも充分に良かったのだが、真に素晴らしかったのはやはり「変わらないでいてくれたこと」だろう。愛に染まった日常を読み進めていくと徐々に彼女のジト目が増えていって、嫉妬からやがてそれは軽蔑へと変わっていく。ああ、これだよこれ!”あの彼女”も残っていてくれたか!と嬉しくてつい跳ねてしまった。


スキンシップの激しい咲来への嫉妬から始まり、部屋でエロ本を見つけてとんでもなく不機嫌になったり、言動一つで笑顔から軽蔑に切り替わる。私が知らない彼なんて嫌だ、本当に彼のぜんぶを知りたい。そんな激重な彼女の愛が私は心地よかったし、それでこそ私の愛した女だと思う。

そして、そんな激重な彼女に同じ激重な武器を構えて立ち向かっていく主人公は流石だなぁと。本編でも彼女の傍に立ち、あくまで彼女自身が変わるきっかけになろうとした彼の立ち回りの素晴らしさは今作でも健在だった。他ヒロインが好きなユーザーには申し訳ないけれど正直、この組み合わせ以外はありえないとすら思ってしまう。

そうやってまた更に壁を超えて、本当に意味で知り合った二人の結婚式は美しい以外の言葉が出てこなくて、本作をプレイしていた時間の中でも一際、心が揺れ動いた場面でもある。自分を認めさせてくれて、自分を受け入れてくれた。だからこそのあの涙と笑顔だろう。

「もしこの世界に、恋人関係も夫婦もなかったとして」
「それでも、きっと私は賢一のことだけを愛してしまうと思うの」
「それが私の幸せだから」

エピローグの彼女は喋れば幸せが駄々洩れするような感じで、読めば読むほどに私の心も満たされた。他ルートの彼女も決して不幸になることはないけれど、やはり幸せになるのはこのルートしかないんだと、そう言ってくれた。
本当にこのルートを最後までとっておいて良かった





前作が本編というよりは、前作は前編で今作が後編と言ってしまってもいいくらいには良い出来且つ満足感のある作品に仕上がっていた。彼女の幸せを見届けることができて幸せだ...。