設定に難ありで個別ルートの内容も薄めだが、取り合いは結構しっかりしていて、感じ入る場面もいくつかあった。主人公の姉に対する印象で評価が大きく分かれるかなと。
リアエロ2で終わりだと思っていただけに本作が発表された時はなかなか驚いたが、設定はまた別のものが用意されていたのでそれならまぁと。前作はふざけた設定だったが今回もまた謎な設定を持ってきた。一見すると話に起伏を生みそうだが、そこから良い方向にもっていくのが難しそうだなと。正直、設定に対する不安は大きかった。
そして、その不安は明確な不満点へと繋がってしまった。恵那ルートにて陽菜乃との決着が付き、姉にも関係を認められて、あとはもうゴールするだけの状態の時に忘れていた設定が悪い方面で作用した。停滞気味な話に起伏を作ろうと思ったのだろうけれど、私としては不要な展開にしか感じなかった。問題も電話一本で解決なのが…誰が読んで感動するのだろうか。フラグクラッシュを乗り越えられて良かったねと思う事もできなくはないが、そもそもフラグクラッシュがなければもっと自然で幸せな物語になったのではと考えてしまう。
だからこそ、そのフラグクラッシュの設定が適当に打ち砕かれている祭ルートは結構好きで、サブヒロイン故に尺は短いけれど読後感も良かった。そもそも祭の立ち位置がめちゃめちゃ好みなので、もっと彼女の出番を増やして、何ならメインヒロインにしてあげてほしかったというのが正直な気持ちである。大親友で世話焼きで頼れる美少女なんて…障がい者の主人公くんを支えてやれる唯一無二の存在だろう。祭ルートは光源氏計画をしている哀れな負け組の末路が見られる点も含めて読んでいて一番楽しいルートだった。
あとは全体を通して良い点として、ヒロイン同士の争いが始まりから終わりまで描かれているのが良かったなと。主人公の争奪戦は珍しい展開ではないが、きちんと振られて、主人公がいなくなった後に涙を零すところまでをやってくれる作品はレアだ。絢音ルートなんかはまさにそれがしっかりと描かれていて、敗北し慰め合う恵那と陽菜乃を見て切ないけれど嬉しい気持ちになった。
で、忘れてはいけないのが姉の澪の存在である。ぶっきらぼうだけれど、弟のことが大好きなお姉ちゃん。そんなキャラクター故に弟が誰かと付き合うことになった際には必ず目の前に立ちはだかる。人によっては彼女を鬱陶しく感じる場合もあるかもしれないが、私はこういった姉キャラが大好物なので、彼女が登場するたびに彼女の意見を聞いて頷いていたし、彼女が二人の関係を認め悲しそうにしている時は本当に良い人だなぁとしみじみ思っていた。彼女のルートを欲する気持ちは強いけれど、絢音ルートの彼女の台詞を聞く限り難しいだろう。弟をダメにする、そんな結末を彼女は望んでいないのだから。
好きな部分よりも気になってしまう部分の方が多い作品だったが、サブキャラクターが予想外に良いキャラクターばかりだったのは収穫かなと。祭ルートをブラッシュアップして作り直してほしい。