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asteryukariさんのサイコロサイコ -セブンスヘブン-の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
サイコロサイコ -セブンスヘブン-
ブランド
CHARON
得点
75
参照数
401

一言コメント

ヒロイン全員がサイコパスという斬新な作品。けれども物語は決して悲惨ではなくて、深い愛と温かさに包まれたものばかり。特に自分の意志を最後まで貫いてくれた彼女のお話が印象深い。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


CHARONさんの作品であり、「サイコロサイコ 完全版」のリメイク・追加版にあたる登場するヒロイン全員がサイコパスでおまけにヤンデレ気質という。あらすじを読んだだけでもまあ興味がそそられる作品になっている。

タイトルにあるようにサイコロの出目を選択することで、それぞれの話が始まり、ヒロインの機嫌を損ねないように選択肢をクリックしていくというシステム。ちなみに間違った選択肢(赤いものは即BAD)を選ぶとBAD ENDとなり、またはじめからになる。私は序盤から主人公の彼女である「七七」を好いていたので、彼女を贔屓する選択肢を選んでは他のヒロインに殺されるというのを繰り返していた(笑)。


ヒロインのタイプは様々で、辛い境遇の中で主人公に出会ったヒロインもいれば、いきなり目の前に現れて懐いてくる女、または自身の目的を達するために近づいてきた者など...色々な女性がいた。共通するのは皆、どこかしら壊れている点で、時たま自身の感情が抑えきれず主人公や七七に危害を加えたりすることも。

そんなわけで物語は厄介な彼女達を上手いこと制御して、良い方向に持っていくというものが大半である。なので当然、ずっと新鮮で面白いといった気持ちにはならず、話によっては冷めた目で見てしまうものもあった。また、ヤンデレという言葉に引きずられ、個性が同一化してしまっているパターンがあり、全体を見ると決して物語の質が高いとは言えない。


しかしながら、心の底から面白いと感じた物語もあった。それが第三の出目の話である。このお話に出てくる骰子というヒロインの行動がもう脳裏に突き刺さった。途中まではふわふわして愛らしい、悪く言えばぱっとしないヒロインだったのだが、終盤になるにつれて愛が深まっていくと、一気に魅力的なキャラクターへと大変身する。

「あのね。目を塞ぐ方法なんていくらでもあるよ」
「要は、強くつよぉーく、相手の印象に残ればいいだからね」

そう言い残した彼女が選んだ結末は...主人公の目の前で骨になって朽ちること。これがまあ衝撃的で、衝撃を受けた後すぐに彼女の愛の深さ、もっと言えば執拗さが伝わってきた。主人公には忘れられず、永遠に愛され続ける。これが彼女の望んだ結果であり、彼女が幸せになるための答えだったわけだ。

いや、凄い。何が凄いかというと、自分で愚かな選択、逃げの選択だと分かっている上でそれを正としてしまうのが凄いなと。しかもすごく幸せそうな表情を浮かべてやり遂げている。そんな彼女を身勝手と捉える人が大半だと思うが、私は凄く魅力的に見えた。彼女だけはヤンデレの枠に囚われない素敵なヒロインだと感じた。余談だが、この第三の出目とIFルートは別のライターさんが担当しているとのこと。たまたま自分と相性が良かったのかもしれない。



先にも述べた通り第三の出目の物語は光るものがあるし、グランドルートの出来も無難に良い。なので総合的な評価としては良作と言えるのではないかなと。楽しいサイコロ旅だった。