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asteryukariさんのGINKAの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
GINKA
ブランド
FrontWing
得点
72
参照数
340

一言コメント

ヒロインの愛らしさを前面に押し出した作品になっており、表情の変化を眺める時間は幸せそのものだった。物語に関してはいくつか不満も残るが、不快感等はなかった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


ひと夏の島を舞台にした作品であり、素敵な背景絵とBGMの良さも相俟って雰囲気は抜群に良い。メインで活動する場所となる宿泊先や家以外にも、寂れた商店街や島の何気ない風景を、物語を通じて余すことなく映してくれるのも島好きにはたまらない。


さて、内容の話に移るが本作において最も魅力的だったのは何かというと、それはやはりギンカというヒロインそのものになるだろう。かつて主人公が恋心を抱いた相手であり、数年の時を経て再会した相手。その盤石なポジションに立つに相応しい女の子だった。ビジュアルだけでも相当に愛らしいが、読み進めていくと元気で駄々っ子な彼女にどんどん心を奪われていく。「フンス」を某高性能さんから継承しているのもファンとして嬉しい。

また、本作におけるもう一人のギンカこと銀花のことも忘れてはいけない。というか物語的にはこちらが正ヒロインなので、中盤以降か彼女の出番の方が増えていく。主人公の命を救う代償として神に恋心を捧げたが故に序盤からかなり辛辣な態度を取り続ける彼女だったが、私としてはむしろウェルカムで、普段クールな彼女が時たま見せる女の子らしい表情を目撃する度に悶えていた。


そんな魅力的すぎる二人と過ごす日常は大変に楽しく、やはり二人が主人公を巡って対立し合っている状況になると自然と口角が上がっていった。意外だったのはそんな日常パートの尺がそんなに長くない点で、意外と早い段階で物語の核となるお話が始まる。

そのお話が正直に言えばあまり出来がいいものではなかった。読み始めの頃はそれなりにわくわく感もあったのだが、NEXTに入ってからはそのわくわく感もなくなっていった。質より量というか、無駄な繰り返しを行うことで、薄さを一所懸命誤魔化しているように感じてしまったのだ。

また、物語の着地点についても、着地点自体を否定するつもりはないが、着地の仕方があまりにも杜撰だった。銀花と協力して色々と行動を起こし、死の淵を彷徨った挙句、最後に頼るのがそこなのかと。驚きもなければ勿論、感動も一切なかった。流星の「たぶん、帰っていったんだと思う…」の台詞を見て唖然とした。まあライターさんらしいと言えばライターさんらしいが...。


とまあ物語に関して言えばかなり不満もあったわけだが、もう一つ大きな不満があった。それはサブキャラクターの立て方である。特に先生と花燐は好きになる瞬間はあったのに、好きになれなかったので読後非常にモヤモヤした。なぜ好きになれなかったのかと考えると、やはりキャラクターがブレていたからだろう。作品の都合で不自然に立てられていくのが肌に合わなかった。あとはまあ、個人的な願いを言えば花燐さんはもう少し尖っていてもよかった。





改めて振り返ると無視できない不満もあったが、まあお目当てのギンカ及び銀花は大変魅力的で、スチルや音楽も好みだったので、悪い作品ではなかったかなと。

何より最後にあんな笑顔を見せられたら、駄目な作品だなんて言えない。