ErogameScape -エロゲー批評空間-

asteryukariさんの電愛カノジョ 〜サ終を過ぎてもきみといたい〜の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
電愛カノジョ 〜サ終を過ぎてもきみといたい〜
ブランド
スタジオ奪ルージュ
得点
73
参照数
995

一言コメント

物語に意外性はないものの、幼馴染の扱い方がとても好みで、彼女のことを目で追う度に胸が締め付けられた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

VR美少女ゲームが生きがいのどうしようもない二次元オタクな主人公が、画面から出てきたゲーム内の美少女と共にえっちで甘い同棲生活を送っていこうというのが導入部分であり、これを見た時点ではよくあるエロゲだなぁといった印象を受けた。美少女ことルーチェが出てきて数秒で主人公にえっちを迫ってきて、主人公も流されて己の童貞を捧げてしまう。なんて都合のいい展開だろうか。

しかし、読み進めていくと本作にはルーチェ以外にもう一人ヒロイン枠を与えられている少女がいたことに気付く。そう、幼馴染の愛夏である。何を隠そう主人公にVR美少女ゲームを進めた張本人であり、自身もオタクという数少ない主人公の良き理解者。おまけに可愛い。しかも主人公に明確に好意を持っていて、VR美少女ゲームを進めてしまったことを後悔していると来た。そんな彼女がルーチェの存在を知ったらどうなるのか、わくわくしながら見守っていたが案の定、衝突していた。


本作の気に入った部分はここで、幼馴染の愛夏がとことん負けヒロインムーブを噛ましてくれるところだ。文字通り空想の世界から出てきた圧倒的美少女を前に、幼馴染であることでマウントを取ろうとしたり、デートする二人を見て「いいわね休日にデートできる相手がいて」と煽ってみたり、自分と会話していてもルーチェの事ばかり気に掛ける主人公を見て悲しくなったり…いいぞもっとやってくれな行動ばかりを見せてくれる。

「どうして私じゃないのよ!なにもかも…二次元にあんたを奪われて、私がどれだけ…」

講義室で感情をぶちまけるシーンは特に印象的でその後、見事にセフレムーブを噛ましてしまう所も含めて本当に愛おしい。今だけは私だけを見てくれると、シーンの中で彼女の心情がありありと描かれていて、読み手を幸せにしてくれる。


終盤になるとお約束とも言えるルーチェとの別れがやってきて、最後の時間をどう過ごすかを選択することになるわけだが、私は愛夏が好きな上でルーチェENDを好む。なぜなのかと考えると、やはりその選択こそが彼女の輝く舞台であると考えているからである。

単純に負けヒロインとしての彼女が見たいという気持ちだけでなく、凹んだ主人公の肩を叩いてあげられるのはやはり彼女だと思うからである。残念ながらその辺の描写は省かれていたが、彼女の言っていた「あの子とは違う立場で、蒼汰の傍にいたい」という台詞を信じると突然、疎遠になったりはしていないのかなと。





一人の女の子に肩入れした結果好きになったタイプの作品ではあったが、ルーチェもまた魅力的なことには違いない。ボリューム及び描写不足感は否めないが、それなりに満足のいく一作だった。