「おもしろい野球のゲーム」ではないが、シナリオ勝負の作品でもあまり見ないような衝撃展開がわんさか用意されていて楽しかった。…いつきルートどこですか?
パワポケ10ということで、記念すべき数字に合わせたのか色々とパワーアップしていて、制作陣営の本作への力の入れ具合がよく伝わってきた。
まず野球パートが完全3Dになっており、実況まで付いた。これは素直に嬉しいポイントで、BGMなんかは前作や前々作の方が良かったと感じたものの、野球パートの臨場感も向上した。また、サクセスでセーブの仕様が変わった点も非常に嬉しく、サクセス重視でやっていた身としては大きな改善だなと。
サクセスの内容について触れていくと、主人公はこれまでの作品とは異なり高校野球部員なので、かなり普通の野球ゲーになっている…わけもなく、相変わらずスリリングな展開の詰まったシナリオばかり読まされた。主人公が学生というポジションについているだけの化け物な点も実にパワポケらしいなぁと。
ヒロインは五人+サブ二人といった具合で、今回は皆主人公と同じ学生で、驚くことに皆人間である。中には人間離れした者もいるが、幽霊やサイボーグではない。そんなわけでようやく純粋な恋愛ゲーとして楽しめるのでは!!と思っていたのだが、まあそんなことはなかった。しかしながらそれが本シリーズの醍醐味でもあるのだ…。
シナリオはとにかく過激で、屋上から身を投げるヒロインが二人に、ナイフで刺されるヒロインが一人いる。…これが本当に野球ゲームなのだろうか。少しフラグ立てを間違えると飛び降りてしまうので、攻略中は色々な意味で頭を悩ませた。また、主人公の通う学校自体が人体実験の場所だったり、能力バトルが勃発したりとSF色も強めなので、やはり野球ゲームではない。
ただ、それ故の高揚感があったのも事実で、非現実的な設定を存分に取り扱った紫杏、和那ルートは読んでいて結構楽しかった。以下ルートごとに感想を述べていく。
●紫杏ルート
真面目に真面目を塗りたくったような女の子で、謎理論で明るく切り抜けようとする主人公にも厳しく当たっていた。そんな大真面目な彼女が主人公との出逢いを通じて軟化していくというのが本シナリオのざっくりとした内容なのだが、そんな甘々とした雰囲気では終わらないのがパワポケ。
結末としてはグッドエンドが凄く好きで、浜野と和那を上手く利用していたなと思う。浜野に関してはまあ思うところがないでもないが、彼女の行動原理を理解するとまあ可愛いもんだなと。精神年齢のことも加味するとまあまあまあ…。和那は純粋に良い立ち位置で活躍していたので、後の攻略が非常に楽しみになった。
紫杏ちゃんは赤面している時が最高に愛らしいので、どうか闇の道には行かず、主人公の傍で恋する乙女でいてほしい。
●和那ルート
大柄で腕っぷしも強いが過去のトラウマから男性に対して恐怖心を抱いているヒロイン。そんな子が主人公と会話を重ねることで明るくなっていくなんて運び方をされたら、そりゃあ好きにならないわけなく、先に紫杏ルートをクリアしていたのもあって彼女に対する好感度はかなり高めだった。
シナリオは例よって野球どこいったなスリリングでド派手なものが展開されるが、これがなかなか面白い。特に良かったのが浜野との友情の深め方で、紫杏ルートの二人を見て良いなと思っていた自分としては、嬉しすぎるサプライズだった。
グッドエンドでもバッドエンドでも和那と主人公はお別れすることになるのだが、浜野×和那のコンビが好きな身としては大満足だったなと。和那がちゃんと主人公に対して未練を持ちつつお別れする場面が見られただけでも十分である。
上記二つ意外だと短めではあるが妙子ルートもかなり好き。とにかく妙子が魅力的なヒロインであることに加えて、凄く普通の恋愛模様を見せてくれるので、まあ読後感が良かった。エンディング分岐がどちらもハッピーエンドなのが本当に疑わしい。個人的には敗北エンドの方が彼女のイイ女感が出ていて好きだ。また、裏サクセスでは8で大好きだったリンがに活躍の場が設けられていたのが嬉しかったなぁと。相変わらず素敵過ぎるお姉ちゃんだった。
といった具合でまあ相変わらず黒くて重い要素てんこ盛りの作品ではあったが、ちゃんと読み進める面白さがあったり、憂鬱なシナリオばかりだからこそ逆に妙子ルートなんかは清涼感が強まったりもしたので、まあ楽しかったかなぁと。
本当にいつきちゃんルートがない点だけが心残り。これで勝ったと思うなよ~!