主人公を喜ばせるために慣れない環境で様々な事に挑戦していく彼女は逞しく、そして愛らしかった。内容的には少し物足りなさもあるが、ヒロインの魅力は充分以上に享受できたかなと思う。
幼い頃に海外で仲良くなった女の子が、今度は日本に留学生としてやってきた。しかもよくある教室で運命の再会ではなく、直接に来るというから驚き。振り返ってみるとこの時から既に彼女のアグレッシブさが出ていたのだなと。
本作の魅力は何と言ってもブロンドヘアーの幼馴染ことメアリーちゃんに尽きる。その圧倒的に可愛いビジュアルもさることながら、中身まで可愛い。いつもニコニコしていると思ったら、急に驚いた表情を浮かべたり、時にはしかめっ面になったり、彼女の表情の変化を追っているだけでも幸せになってしまう。
内容としては本当にメアリーとの日常が映し出されていくのみで、派手さはないし感動を呼ぶ瞬間も少ないが、メアリーの一つ一つの行動に焦点を合わせると、幸せに満ちた作品に見えてくる。日本の文化に親しみながら、様々な事にチャレンジしてく姿が本当に微笑ましい。何より当の本人が楽しんでいるのが素敵で、着々と日本に馴染んでいく様を眺めるのが楽しかった。
「日本に来てから、わたしにとって毎日が特別な日だったけど…」
花火の時の台詞は中々印象的で、決して間違った読み方をしていなかったんだなぁと。内容としては大きなイベントや盛り上がり所がなかったかもしれないけれど、毎日少しづつ日本の文化を知っていく。そんな時間は彼女にとってかけがえのないものだったわけだ。
そんな楽しい日々と、主人公と過ごす時間の両方が同時に失われるともなれば、涙が溢れてくるのは当然だろう。普段は明るい彼女が見せる涙は中々に効いた。けれどまあシリアスな雰囲気で終わるなんてことはなくて、最後に再び笑顔の彼女が見られて心底ホッとした。会いにいってくれた主人公を撫でてやりたい気分だ。
とまあこんな具合で特別面白いお話があるわけでもない作品だが、メアリーの心情に沿って読み進めると作品対する印象もだいぶ変わるはずである。彼女にはいつまでも笑顔でいてもらいたい。