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asteryukariさんのThe Monstrous Horror Showの長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
The Monstrous Horror Show
ブランド
蟹ヘッドクラブ
得点
80
参照数
135

一言コメント

尖った性癖や気味の悪い化物たちが登場するのに、内容はどこまでも明るい。最初から最後まで愉快で笑い転げてしまう作品だった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


廃病院に迷い込んだ四人の女性が化物に追い掛け回されながら、脱出を目指すお話であり、四肢切断やら肉体改造やらが息をするように行われる。驚くべきはそれらが捕まって迎えるBAD派生ではなく、正規ルートで行われている点。開始して一時間も経つとプレイヤーは首ちょんぱされた少女の姿を目にすることになるわけだ。

そんなえげつのない作品なのだが、本作をプレイしてグロゲーやホラゲーといった感想が出てくることは少ないように感じる。なぜなら本作は紛れもないギャグゲーなのだから...。グロテスクな光景も少し切ない展開も、全てを笑いで包み込んでしまうような、そんな大胆さが作品の色であり、魅力なのである。

構成としてはヒロイン四人の個別パートをクリアしていき、その後一本道になっていく。


まずはヒロインパートについて、四人のヒロインを操作しながら化物から逃げながら謎解きをしていくわけだが、ゲームとしてはごくごく単純な作りになっていて、ゲーム性が面白いということはない。けれどもにやけ顔が止まらなくなってしまうのはどのヒロインも非常にユニークだから。いや、ユニークだと言葉が綺麗過ぎるかもしれない。どいつもこいつも変人だからである。

コミュ障ぼっちにイカれビッチに変態ゴリラ教師に中二病令嬢...。とにかくまともな奴なんて一人もいなかった。変人過ぎて敵側がドン引きしてしまうなんてことは日常茶飯事で、そんな光景を見るたびに腹を抱えて笑った。特にビッチはこちらが予期せぬ面白発言ばかりするので、最後まで大好きなキャラクタ―だった。


といった感じでヒロインパートはキャラクターの魅力を知り、BAD差分を回収することが主な楽しみなわけだが、夢野パートを経て始まる「???」は読み物としても面白い。イチの秘密が語られる夢野パートは本作の見方が大きく変わるパートでもあり、悪役のロリババアくらいの印象だった夢野が凄く愛おしいキャラクターに見えてくる。EDムービーにてイチの横で涙を流す姿はとても印象深い。ドット絵で表現されているところにも味を感じる。


「???]...The Monstrous Horror Showは友情あり、笑いありの内容になっていて、決して一つにはまとまらなそうな彼女達が、一致団結して熱い展開を見せてくれる。夢野も夢野でこれでもかというくらい愛の重さを彼女達に見せつけてくるので、そんな両者がぶつかり合う最終決戦はなかなか見応えがある。
そんな熱くて目が離せないのが終盤だが、待ち受けている結末はやはりギャグであった点が凄く良いなと。敗れた夢野が一号に包まれて終了というのも個人的には好きだったが、本作にとってあれ以上に良いオチはなかった。最後までおもちゃにされるぼっちちゃんに、ケツ拭き自慢をしてくるババア...本当に軽く思い出しただけで笑える。



総じて色が出まくりな作品であった。こんなに奇天烈で愉快なゲームをやったのは久しぶりだ。
楽しい思い出をありがとう。