あらすじを読んで惹かれた人の心をがっちりと掴み続ける、実に愉快な作品だった。結末の件を差し引いても充分に良いモノであったと言える。
大正の日本を舞台にした伝奇系和風ファンタジーな作品。時代設定と題材の組み合わせが絶妙で、あらすじや他社の感想を見て少しでも良いなと感じた人なんかはそれはもう楽しめることだろう。現に私がその一人であり、たまたまこういった作風のモノをやりたかったのもあってドハマりした。
「みず」及び「みずや」というこの作品独自の設定もそそるもので、詳しい説明こそないがどのような原理で生まれているのか、またどういった種類のものがあるのか。話の合間合間に考えてしまうくらいには私の心を掴んでいた。故にその辺の説明がもっと欲しかったという気持ちが強い。そしてこれは「みず」以外についても同様のことが言える。
本作は序章+五話の構成になっていて、序章でこの作品の世界観に慣れ親しみ、その後メインの話に移っていく。元凶となる「賢者の目」の誕生及びそれを持つことになった彼女に目を向けるのであれば一本道の物語と言えるが、各話で異なる人物が登場し、時に視点を変えながら話が進行していくところを見るに様々なヒロインにスポットライトを当てたかったのかなと。
そうやって色々な人々と関わりながら事件と解決していき、最終的にはまた彼女と対峙することになるのだろうと踏んでいたのだが、そんなことはなくぶつ切れのような形で終わってしまう。設定的に気になっていたのもあって、これについては少し残念に感じたが、マイナスに感じたのは本当にここくらいだった。あの結末を差し引いても本作は実に面白い作品だったと私は思うのだ。
良い点はいくつかあるが、一番はやはり登場人物たちの描き方になるのかなと。主人公を含め、本当にみんな話を追うごとに好きになっていくような、魅力溢れる人物ばかりだった。各話で登場する女の子たちや主人公と共に捜査する探偵や刑事達。それから妖精さん等々…。もっと彼らの会話が見たかったし、彼らを生んだ世界に入り浸っていたかった。そう、結末が云々という気持ちよりも楽しかったが故にもっと読みたかったという気持ちが強いのだ。それほどまでにこの作品はドンピシャだった。
レイプや串刺しなど、物騒な事件を用いるわりに全く沈んだ気持ちにならなかったのは彼らの面白可笑しい掛け合いがあったおかげだろう。「串刺し」を「串団子」と変換してよだれを垂らしているミコミコちゃんを見て思わず微笑んでしまった。サブのサブのような立ち位置なのにあれほどまでに印象に残るから凄い。この作品をプレイしてミコミコちゃんの事を好きにならないプレイヤーなどいるのだろうか...。
あとは絵なんかもお話と上手く調和していたかなぁと。特に目の描き方がとても私好みで、シーンを迎えても裸体よりも目に着目してしまうことが多々あった。身体は小さいのにしっかりと妖艶な雰囲気を纏っている。故にどのシーンにもかなりそそられた。
思い返してみると、やはり凄く良い作品だったように感じる。「最後がー」とか、それで終わるようなモノではなかった。素敵な時間をありがとう。