ErogameScape -エロゲー批評空間-

asteryukariさんのGeminism ~げみにずむ~の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
Geminism ~げみにずむ~
ブランド
CRAFTWORK
得点
68
参照数
584

一言コメント

読んでいて面白いと感じる瞬間は少なかったものの、だんだんと愛を知っていく少女たちの姿はとても煌めいていた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


パッケージを開けた時からお洒落で、タイトル画面を見た瞬間もまた驚かされた。少し進めてみるとBGMにもこだわりが感じられる。当初の予定から遅れての発売となった本作だが、少し読み進めてみるだけで時間と熱意がこもった作品であることがよく理解できた。表情差分なんかもかなり力が入っている。

物語は二人の姉妹が仕會わせと呼ばれる不思議な儀式を通して、文字通り死闘を繰り広げていくわけだが、姉妹については勿論、淡墨と月白に関しても情報がないままに進んでいくため、序盤はやや退屈気味。ただ、読み進めていくと姉妹の過去が見えてくるのでぐっと興味が湧いてくる。なぜそう生まれてしまったのか、親はどうなったのか、その辺を桔梗編ではしっかり伏せて、深紅編で明かす作りはなかなか良い。

しかしながら本作を読み切ってやってきたのは感動でも驚きでもなかった。「こんなものか」と思ってしまったのが正直なところで、物語が迎える結末も、仕掛け(茶番)も面白味がないものだった。2000年前後っぽさはあるので、そこをプラスに感じられれば評価も少しは変わりそうだが、個人的には刺さらなかったかなと。また、所謂エログロを楽しめると良かったのだが、そちらも弱めなので...。



核となるシナリオは思った以上にハマらなかったわけだが、物語を読み切ったうえで改めてそれぞれのカップリングの日常描写について振り返ってみると温かい感情も湧き上がってくる。奇形児故に愛される経験のの少なかった二人が、淡墨と月白を介して愛を享受していく。無論、彼等からすれば己を満たすための駒に過ぎないわけだが、それでも彼女が感じていた幸せは真であったはずである。

特に深紅は眺めていて面白く、ツンデレな性格が彼女というキャラクターを一層魅力的にしていた。はじめは月白に対し嫌悪感しか抱かなかった彼女が、手を繋ぎたいと呟いたり、お祭りに行きたいと強請ったり、段々と素直になっていくのが大変愛らしい。時たま酷いことをされても、仕會わせに嫌気がさしても自ら拒絶することはできない。そんな彼女が健気で弱弱しくて、一層私の心を揺らしてくれた。




そんな具合で深紅について考えを掘り下げていけばそれなり良い作品だったなと思えたのだが、やはり核が絶望的に合わなかったので、面白かったとは言い難い。ただ、眠っていた創作者たちが再び立ち上がり、この業界に戻ってきたという事実にのみ着目すれば、素晴らしいことだと思う。これからも良い作品を作るために頑張っていってほしい。