期待していた部分には応えてくれなかったものの、集めてきた食材を嬉しそうに頬張るクロカミサマは大変愛らしく、ちょっとした達成感を与えてくれた。こんな怪異ならば何度だって遭遇したい。
みなとの新ブランドから出された作品であり、クロカミサマと呼ばれる不思議な怪異と出会い、彼女の食欲を満たすべく怪異狩りをしつつ、戦利品として食材を集めていく。肝はこの”食材を集める”という点であり、それに際してどこか懐かしいシステムが採用されていた。まずはシステム及びゲーム性についての感想を述べていく。
ゲームの流れとしては行動数が尽きるまで食材集めし、最終的に廃墟にいるクロカミサマに食材を献上するといった感じで物凄くシンプル。食材集めもメールの情報に沿って怪異と遭遇していけばいいだけなのだが、話が進むとそれだけでは彼女の欲求を満たせなくなり、聞き込みによる情報集めをしたり、霊力を調整したりして多くの食材を集めていかなければいかなくなる。
個人的に辛かったのは三回目の食材集めかなと。本当にあそこだけで何度クロカミサマにため息をつかれ、殺されたかわからない。それ故に彼女が「どれもこれも美味しそうだ」と言ってくれた際には謎の達成感があった。あそこは一つの詰みポイントかなと思う。あとは吸血鬼との対決なんかも。聞き耳を立てるの大事大事。
といった感じで時たま首を傾げつつ、ホッとしつつプレイしていたわけだが、これが面白かったかというとまあ面白くはなかったかなと。勿論、先にも述べた通り達成感を感じる瞬間はあったが、その一瞬で褒めちぎるのは少し難しい...。
で、ここからは肝心なノベルパートについて感想を述べていくが、こちらも少し物足りなさを感じた。まあ価格帯的に仕方のない事なのかもしれないが、ライターさんの魅力である掛け合いが非常に少なかったのが個人的にかなりショックで、何とか会話を生もうと拠点で異常者のようにナスカちゃんに話しかけていたが、何ら話が弾まなくて泣きそうになってしまった。
あとは終盤のクロカミサマとの決着についても、クロカミサマというキャラクターが本作の唯一にして最大の魅力だと思っていたのもあり、なんだか寂しさだけが残ってしまったなと。服従にしても倒すにしても、結局は彼女と別れることになってしまう。怪異と共存は出来ないと、それは八尺様との対峙で示されていた事だけれど、それでも私は彼女の空腹を満たすべく、これからも怪異探しをしていく結末が見たかった。
振り返ってみるとやはり嬉しそうに食材を頬張るクロカミサマを眺めている時間が一番楽しかったかなと。それ以外はシステム的にもお話的にも不満の残る結果となってしまったが、まあナスカちゃんとクロカミサマが大変愛らしかったので、それなりには良かったかなと思う。次回作はどこの系列から出るのかわからないが、次こそは面白可笑しい掛け合いが魅力の作品を出してほしいものだ。