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asteryukariさんのグリザイア:ファントムトリガー 08の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
グリザイア:ファントムトリガー 08
ブランド
FrontWing
得点
78
参照数
1801

一言コメント

戦いの中にはこれまでの彼女達の歩みが確かに刻まれていて、ちょっとした日常会話が胸に沁みることも。物足りない気持ちも多少はあるものの、綺麗に区切りがついたことを嬉しく思う。お疲れ様でした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


08ということで、前作にて本作が最終作であると告知されていたこともあり期待値はかなり高めだった。長きに渡るシリーズがようやく幕を下ろすのかと思うと自然と頬も緩む。最後にどんな花を咲かせてくれるのだろうかと、それはもう楽しみにしていた。

そして、プレイしてみた感想としては、すごく綺麗にエンディングを迎えたなぁと。因縁ともしっかりと区切りをつけて、エピローグに平和な日常を映し出す。まさに理想形とも言える結末を迎えてくれた。ただ、同時に少し味気無さを感じたのも正直な部分であり、特に終盤にかけての動きは綺麗ではあったものの、熱さや感動といった感情は生まれなかった。



その理由が因縁との決着だ。CIRSを裏切り、対規模なテロ行為を行ってきたエニシとハルト家族とも言えるアオイを殺したクロエ。その二人に復讐を果たすためにハルトは戦ってきた。そして、本作でようやく彼らの下に辿り着いた。こんなの燃えないわけがないだろう。

髪型もまるでアオイのように結ってもらって、武器もかつて折られた刀を打ち直したものを使って、もうその準備だけで思わず唾を飲み込んでしまう。ああこれから最後の闘いが始まるんだなと、楽しみで仕方がなくなった。余談だが髪を結う際に選ぶヒロインによって台詞及びCGが変化するのだが、ぶっっっつぎりでトーカちゃんが可愛かった。何がずるいって一人だけ「好き」だなんてワードを口にするのだ。それはもうさらっと告白してくれちゃって、その後に恥ずかしくなって髪の毛を引っ張ってしまうのも含めて最高に愛らしかった。

そして、立ち絵との変わりように驚いてしまうな形相で敵陣に攻め込み、宿敵であるクロエと対峙する。素敵なのが度々アオイの回想を挟んでくる点で、彼女の言葉に耳を傾けながら戦うハルトを見て何も感じないはずもない。勝ってくれ、あの憎き女を切り裂いてくれと、そう願いながら眺めていた。

で、まあ私の願い通りに切り裂いてくれたのだが…ハルトも言っていた通りかなり一方的な戦いだったので、正直これで終わりなのかと思ってしまった。勿論、ハルトが強すぎただけではあるし、先のレナ戦ではクロエが圧倒していたので、クロエ自体は弱くはないはずだが。

ただ、嬉しかったのが敵討ちは意味がないなどと綺麗ごとは抜かさず、しっかりと彼女を殺す選択肢を用意してくれた点。自分のやりたいことを新しく見つけるために、やり残したことを片付ける。納得のいく答えだった。ちなみにクロエを殺さないとエニシと再会を果たしてしまうので、個人的には殺した方が好きかなと。幸せに逝くだなんて許せるはずがないのだ。

また、エニシはエニシで拳銃による被弾がそのまま死因になるので、やはり消化不良感が残る。ただ、全体を通して彼は悪に染まり切っていない、言うなれば中途半端な悪投だったので、実に彼らしい最後と言えるだろう。



といった感じでまあ不満点もあったが、一方で予想外に良かった点もある。それはBADルートの存在で、綺麗すぎるTRUEルートとは違い、BADルートはかなりえげつのないものとなっていた。ヒロインは全員死を迎えるわけだが、中でもレナなんかは見るも無残な最期を迎えていて心が痛くなったほど。

ただ、そんなレナの拳銃がハルトの命を救うという流れはシンプルに良いなぁと。クロエに弾を撃ち込まれるCGを見た時は、流石のハルトもこのルートでは駄目なのかと思ったがしっかりとやってくれた。個人的にこちらの決着の方がしっくりくるなぁと。突き刺せれば人は殺せる、どこか”彼”を思い出す殺し方も含めて好きだ。

エンディングもまた上手くて、ベタながら涙を誘う。みんなスッキリとした表情を浮かべているのが本当に良い。



こうしてBADルートをじっくりと噛みしめた上でTRUEルートをプレイしてみると、綺麗すぎた光景も自然と良いものとして受け入れられるようになる。敵だったやつらも、よくわからないやつらも皆、学園との関わりがあって。それぞれ新しい道を楽しんでいる。素敵な光景だなと思う一方で、ああ、もう終わってしまったんだという寂寥感も押し寄せてくるわけだ。彼女達のその後も見たい…。

彼女達の戦いが終わり、グリザイアファントムトリガーという作品も終わる。まさに最終作に相応しい内容に仕上がっていた。ここまで連れてきてくれたキャラクター達にお礼を言いたい気分だ。本当にありがとう。