主人公とヒロインよりも、ヒロイン同士の会話に夢中になってしまう作品だった。ちょっぴり切なくて、けれど明るく賑やかな空気を大事にしてくれる点が良かったかなと思う。
恋愛コメディが魅力な作品を出し続けてくれているASa Projectの最新作。今回の恋は二股状態から始まるということで、序盤から仲良しこよしとは言い難いやや複雑な関係性で物語は進行していた。ただ、空気は凄く明るく賑やかで、多少のシリアス要素を混ぜ込んできても、その後には笑って読み続けられるような作りになっていた。私はこれが本作の大きな魅力だと考えていて、最後までこの作品らしさを貫いてくれたのが良かった。
また、肝心のヒロインの話をしていくが、例によってまあ可愛い面々が揃っていた。購入前にキャラクターデザインを見ただけでも、中々良いなと感じたが、いざやってみると本当に全員が可愛く見えてくるから困る。凄いのがサブヒロイン達もしっかり可愛い…というかサブヒロインの方が好きというユーザーも一定数はいるのではないかと思う。私なんかは精華ちゃん一目惚れしてしまったので、彼女の出番がある度に目がハートになっていた。極短ではあるが彼女との結末があるのも嬉しい。
以下ルートごとの感想。
◆煌
たこ焼き大好きゲロインこと十色 煌ちゃんはまあとんでもなく可愛くて、ヒロインの中では一番好きだった。余裕がありそうな立ち振る舞いをしているが、実は感情が表に出やすい性格で、過剰なくらい驚いたり、煩いほどに泣き出したり…見ていて飽きない素敵な女の子だった。主人公とワンナイトしてしまったと勘違いして彼女面し始めた時は本当に愛おしくて殴ってやろうかと思った。
お人好しというか、自分がどんな立場であっても人の気持ちを考えられる優しい女の子で、他ルート振られた後もなんだかんだ主人公と仲良くしてくれる。最低な振られ方をしたにもかかわらず、彼女だけは彼を擁護するような発言をするのが良いなぁと。まあおバカなだけと言えばそうかもしれないが、そういうところも含めて私は彼女が好きなのだ。
自身のルートはというと、特に山場があるわけでもない、いつも通り笑って、いつも通りたこ焼きを食べて、いつも通り吐いていたが、そうやって平和に煌ちゃんと過ごす時間はなかなか悪くなかった。えっちなシーンもただえっちなだけじゃなく、主人公に喜んでもらいたいという彼女の強い意志を随所に感じられたのが良かった。
◆宮子
美しい白髪が魅力のクール系美少女…なのだが意外とユニークな性格をしていて、喜怒哀楽もしっかりと持っている子だった。彼女はまあ立ち位置がずるくて、彼女と主人公の過去回想を見た時には既に好きになりかけていた。冒頭からずっと言っている「このままでいい」に込められた想いがとても切ない。
そんなわけでルートに突入してからの爆発力も凄まじくて、主人公に甘えまくるのは勿論、それまでと比べると明らかに笑顔が増えているのも良いなぁと。えっちにも積極的で、照れつつも自ら誘ったりして来るのが本当に可愛い。基本的に誘い受けの形になるのも彼女らしいなと。
ルートに入ってみると意外とすんなりとくっついて、予想とはだいぶ異なっていたと感じる一方で、これで良かったのかなとも思う。悲劇にスポットライトを当てるのではなく、ヒロインの幸せを考えてあげる。実に優しい作りのシナリオだった。
◆瑠衣
コスプレ趣味の少女であり、メインの中では唯一、主人公に敵対心剥き出しなヒロイン。二股クズ野郎というあだ名を定着させたのも彼女で、本当に共通ルートでは一ミリも心を許していなかった。
しかし、自身のルートに入ると…
「さっさと結愛なんて性悪のことは忘れて、アタシにアタックしときなさいよ。」
「ステージでアンタに抱きしめられたときね、ビックリしたけど…それよりもドキドキしちゃったの。」
「イくときは瑠衣って呼んでほしい…♡」
この通りの見事なデレデレっぷりを見せてくれる。彼女自身も言っていたが、本当にずば抜けたチョロインになっていくから面白い。初対面が最悪だったのもあって、そんな彼女がここまで落ちてくれたのだと思うと余計に楽しくなってしまう。シーンも何気に攻めたモノが多めなのが個人的には嬉しかったかなと。
◆結愛
主人公が前々から好きだったマドンナ的存在であり、物語のラスボスでもある彼女。複雑な家庭環境から「幸せになるべき者たちが幸せになる」という考えを持っており、故に主人公と宮子をくっつけるべく動いていた。自他ともに認める面倒臭いヒロインである。
結愛ルートに入ってからも彼女の面倒臭さは継続していて、やはり始まった自分の恋物語を素直に受けいれてはいない。理想の恋なんてないのだと、その想いを捨てきれずにいるわけだ。しかしながらシリアス全開というわけでもなくて、空気は常に明るいので、そこは上手く工夫されていたなと思う。
変に起伏を生ませようとしてドが付くほどにシリアスになっていたら目も当てられなかった。ポジションのわりには軽めな印象を受けたお話だったが、この作品らしいといえばこの作品らしい。
あとは冒頭にも触れたが精華ちゃんのルートについても、えっちはするけど彼女のキャラクターを壊すまでいかないのが実に良かった。結愛に見られてしまうところも含めてはなまるをあげたい。
振り返ってみるとやっぱりどの子も可愛かったなぁと。次作も可愛くて賑やかな作品を期待しています。