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asteryukariさんの学園淫奇譚 〜かおり憑きの少女〜の長文感想

ユーザー
asteryukari
ゲーム
学園淫奇譚 〜かおり憑きの少女〜
ブランド
スタジオ奪
得点
78
参照数
813

一言コメント

最低な女がいるなぁと思いながらプレイしていたのに、気づけばそんな女を好きになってしまっていた。彼女というキャラクターの存在をいつまでも胸に刻み込んでいたい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


スタジオ零から発売された作品であり、またタイトルにも「淫奇譚」とあるのでまあシナリオメインではなくエロメインの、所謂抜きゲー枠だろうなと思っていた。実際にプレイし始めてみると即エッチシーンが映し出され、キャラクターの背景事情もあまり語られないままことは進んでいく。驚いたのはヒロインの処女がモブのような男に奪われてしまう点で、最初から主人公の彼女という立ち位置にいるにもかかわらず、純潔を別の男に捧げてしまうというのは中々珍しい光景だった。

で、いとも簡単に主人公の友人ポジションにいた人物が裏切りをすると、あとはもう流れるようにヒロインが他人との行為を楽しんでいく。そのスピーディな展開に驚きつつも、まあこんなものだよなぁと。何やら人間に恨みを持っている幽霊がとりつき、その結果ヒロインとの関係がぐちゃぐちゃになっていく。面白さはないけれど、えっちだしまあ良いかと、序章は頭の中でそんな評価を下した。

しかし、BEFORE編が始まるとその評価は一転する。BEFORE編では悪霊こと香織の過去が語られていくわけだが、これが本作に対する印象を大きく変えたターニングポイントだった。今と同じく少しプライドは高めだけれど、女の子らしく、何より生き生きとしている。今までは湧き上がってこなかった彼女に対する情が湧いてきた。

そんなわけで彼女の身に起きた悲劇と、そこから落ちていく彼女を見るのはまあ辛くて、彼女に対する印象もいつの間にか「最低な女」から「可哀相な女の子」に変わっていた。無論、彼女のしたことは許されないけれど、それでも可哀相だなぁと。BEFORE編で私と同じ気持ちになったユーザーも少なくないだろう。

次にAFTER編について語っていくが…これが本当に良かった。まず主人公も彼女の過去を知ることで情が芽生えているという状況が非常にいい。思わず主人公が彼女を抱きしめてしまうのも、彼女と生きることを選んでしまうのもよくわかる。準備された仕掛けに見事にハマってしまったというか、彼女を好きになってしまったらもうあとは物語を楽しむだけだった。

そして、彼女が最後に選んだ結末、これがもう本当に切なくて愛おしくて、心の底から喜びを感じた。
「ごめんなさい。──でも私、悪霊だから。最後まで悪霊のままでいいわ」
「──最後まで、嫉妬させて」
最後の最後にようやく自身の過ちに気づいて、違う可能性を見つけることができる。こんな残酷なことないけれど、それでも彼女は満足げな表情を浮かべていた。あの時とは違い、今度は笑顔でフェンスの外に身を投げていた。そんな彼女を見て涙があふれた。



振り返ると本当に後半で化けた作品だったなぁと。まさかこんなにも彼女に感情移入してしまうとは思わなかったし、こんな自分好みの結末が用意されているとも考えていなかった。出会いに感謝です。