軽いシナリオではあるものの、作品の作り出す空気感の良さは相変わらず。本編勢が新規勢に負けず劣らずの活躍を見せていた点も嬉しい。
EXシリーズ突入ということで、未踏破の地「奥羽」へと歩みを進めていく久遠たち…と言いたいところだが久遠は例によってお留守番。本編を進めている時は少し可哀相だなと思ったが、ここまでくるともはや風物詩というか、いいぞもっと放置してやれという気持ちが湧いてこないでもない。彼女が留まることで、結菜の役割も一層の輝きを得るので個人的にはいつまでもこのポジションでいてもらいたい。
今作は新キャラ龍巳を中心に物語が動いていくわけだが、彼女がまあまあ癖のあるキャラクターだった。どこぞの魔王を彷彿とさせる厨二病全開な喋り方は結構好きで、恋愛耐性がゼロに近いのも愛らしくていい。キャラクターに対する印象はかなり良かったのだが、いかんせん思考が幼いので、序盤は良くも悪くも振り回されたなと。
終盤になると彼女の真っ直ぐさがプラスに働き、物語としても盛り上がりを見せてくれる。残念ながら最後まで彼女のことを特段好きになることはなかったものの、序盤に見せていた悪い部分は綺麗さっぱりなくなっていたのでそこは良かったかなと。新キャラの中だと喜重が最後まで好印象なキャラクターだったかなと。
新キャラ評は正直微妙だったのが、それで終わりではなかったのが本作の良かったところ。本編キャラクターの活躍場もしっかりと用意されていたのが実に良かった。中でも美空は新キャラの魅力をそのまま食ってしまうような行動ばかりしてくれて、本編の時以上に彼女のことを好きになった。さすがは関東管領である。
過去の行動を詫びる龍巳に対して何を気にしているのかと首を傾げたり、罪悪感に苛まれる鳳蝶に対しては厳しくもあり優しい一言を浴びせたり、行動の数々がとにかく人格者のそれで、そんな彼女を眺めているのが実に楽しかった。本編の時はツンデレな印象ばかりが残ったが、いつの間にか器の大きさが目立つ女性に成長していて、それが非常に嬉しかった。他のキャラクターも活躍はしていたが、様々な面で彼女が一番上をいっていたなと思う。
話自体は結構チープな展開で、故に読み進める面白さはなかったものの、続きは気になる作りになっていたかなと。まだまだ途中なので今後、どういったはなしになっていくのか楽しみである。本編キャラクターが小出しで再登場するのが上手いなと思う。是非とも推したちに更なる磨きをかけてほしいところ。