軽く振り返っても、思わず頬が緩むほどに楽しい時間だった。仲間たちと歩んだ旅の記憶をいつまでも覚えていたい。
アリスソフトがおくる大シリーズ二作目という事で、前作「大悪司」に熱中していた身からするとまあハマるだろうなぁと思いつつ、加えて少しハードルも高めに設定しつつプレイに臨んだ。
番長ということで前作は極道の世界の話であったのに対し、今作では学園を舞台にしている。ただまあ、あらすじを読んでもわかる通り学園内で収まる話ではなく、学園から県内、やがては全国を統一すべく動いていく事になるわけだ。この段階を踏んでいくという作りが非常に好みであり、舞台が移るにつれて規模だけでなく難易度も上がっていく仕組みもまた素晴らしかった。
はじめにゲーム面について語っていくと先ほども述べた通り学園編、県内編、全国編と別れている作りがとても面白かった。
学園編は序章という事もあり地域について考える必要もなければ、仲間も戦闘に勝利するあるいは会話パートを挟むことで増やしていくことが出来る比較的緩いゲームになっている。学園編のラスボスである闇崎アキトもかなり弱めに設定されているので特にレベル上げなどをしなくても自然に倒せる親切設計。
ただ、周回用の仕掛けもきちんと施されており、このキャラクターを仲間にするとあのキャラクターが仲間にならないといった選択要素が含まれているので、学園編をクリアした時点で既に二周目がやりたくなっていた。
続いて県内編について、県内編は学園編からは少しレベルアップしており、敵陣を攻めていくだけでなく、自陣も守らなければならない。調子に乗って敵陣にばかり強い仲間を配置していると、痛い目を見るわけで…ようやく戦略SLGらしくなってくる。
面白いのが学園編で培った戦力がそのまま難易度に直結していく点で、適当に学園編をクリアすると人員不足やら戦力不足に悩むことになるが、しっかりと仲間を集めておけばそんなことはない。
また、これは学園編にも言えることだが、仲間と過ごす時間が長ければ長いほどに愛着も湧いてくるので、そういった意味でも良い作りだったなぁと。サブですらないモブキャラに愛着が湧いているなんてこともザラで、何とかこいつを最後まで活躍させてやりたいと、ステータスを強化しまくっていたのも今ではいい思い出である。ただ全国統一を目指すのではなく、仲間と共に全国統一を目指す。これが本作の最大の魅力だと私は思う。
そして、全国編はというと…とにかくBPが足りない!一周目はBPの事をあまり考えていなかったのもあって二桁が常、調子がいい時は三桁くらいであった。捕まえた捕虜を解放することでBPを得て、そのBPで再び次の戦場へ向かい、そこでまた捕虜を増やしていくといった感じのまさにその日暮らしな毎日を送っていた。
しかし、そんな私に救いの手が差し伸べてくれたのが「カレーウルフ」だった。はじめはたかがカレー屋に100BPも払うのかと躊躇っていたが、いざ立ててみるとかなり儲かる上、イベントでどんどん収益を増やしていける。いつの間にか敵地を占領したらすぐカレーウルフを立てるというルーティンが出来上がっていた。全国を統一するゲームではなく、全国にカレーを広めるゲームだったわけだ。
といった感じで地域フェイズは少し工夫が必要になったが、それは配置及び戦闘フェイズも同様であり、敵勢力が五つに増えたことで難易度も大きく向上した。一つずつ順番に勢力を潰していけば問題ないのだが、私なんかは欲張って二つの勢力に手を出したため、一ターンに四回ほど戦闘を行う羽目になったりして、それはもう地獄絵図になっていた。
敵勢力の中でも特に厄介であったのが護国院であり、他の勢力を潰そうとするときに限って横濱へ進軍してきたりするから本当に困った。忍者の回避率がやや高めな点も非常に憎らしい。決戦イベントも護国院(扇奈ルート時)が一番面倒だったかなと。
逆にラストに待ち構える勢力である九州は、終盤だからか何周しても苦戦することはなかった。また、最終決戦についても同様である。真神威には少しヒヤッとしたものの、お兄ちゃんが非常に強力なので毎回ストレートでクリアしていた。
といった具合にゲーム面はまあ面白くて、気付けば7,8周ほどしてしまった。CG及びキャラクリも無事埋まったので本当にハマっていたんだなぁと。自分でもこんなに熱中するとは思っていなかった。
続いてシナリオ面だが、これまた面白いお話が用意されていた。ゲームに特化して話はおまけ程度のものだなんてことはない、読んでいて視界が滲んでしまう場面もしばしばあった。√は大きく分けて二つであり、そこからヒロインの好感度に合わせて六つのエンドに分岐するわけだが、周回する意味は充分にあったと思う。
また、キャラクリに関連するサブエピソードなんかもそれなりに充実しており、サブエピソードを読み進めるうちに好きになっていくキャラクターなんかもいた。ここからはその辺の話も含めて印象深いキャラクター達を挙げていく。
○狼牙
本作を語る上で欠かせない存在であり、主人公として抜群の存在感を放っていた。一見、あらくれ者に見える彼だが、人としての優しさも充分以上に持っており、ヒロインを慰めている時の彼は、誰がどう見ても魅力的な男性そのもの。そういった意味でも玖那妓との組み合わせが一番しっくりくる。
○玖那妓
メインヒロインであり、私が最も好きだった女の子。容姿及びワンコに変心してしまうだなんて設定だけでも好みなのに、それに加えて心が酷く脆かったりするからもう…最初から最後まで大好きな女の子だった。見た目のわりに面倒臭い性格をしているけれど、それが本当に良い...。
また単なる協力関係としてではなく、本気で狼牙を想っている点も素敵だ。久我に「本当に、狼牙の事を愛しているか?」と聞かれた時の彼女の反応を見て、もう可愛くて仕方がなくなってしまった。あああ!玖那妓にゃんかわいすぎにゃんだよぅ...。
○絵梨花
立ち位置的にはサブだが、一目見た時からかなり気に入っていて、ゲーム上でも常に最後まで強化し続けていたのでとても思い入れがある。学園編では不良娘として振舞っていた彼女が、町でチンピラを懲らしめたり、困っている人を助けてあげるなど強く優しい女の子になっていく様は実に魅力的。
また、サキやショーコとのやりとりも面白く、三人とも本当に良いキャラしていたなと思う。他の二人もモブではあるものの、スキル効果が優秀なので最後までしっかりと使っていた。やはりあの三人はいつも一緒でないと。
○京子
これまたメインヒロインではないのだが、京子のエピソードは本作を語る上では外せない。彼女の話の何が良かったって、それはもう娘であるゆうなとの会話その全てだ。あの見た目からは想像もつかない程に良い母親をしている京子さんと、不器用ながら何とか母の力になろうとするゆうなの関係が本当に愛おしくて愛おしくて...。エピローグでは少し泣いてしまった。
戦闘面では双方ともに対反撃スキルが優秀であり、主に防衛線で大活躍してくれた。ゆうなが戦死すると京子が離脱する点もこだわりがあって良いと思う。
○シオン
全国編のそれも中盤以降から出てくるヒロインであり、少し遅めの登場だったのでどうかなといった感じで観察していたが…まさに自分好み属性をぶつけられて即ノックダウンしてしまった。彼女を仲間に誘う時の狼牙がまた素敵で、本当に良い男だなぁと。
デート風景もシオンが一番好きで、人形だった彼女が狼牙と関わる事で様々な感情を獲得し、やがて人らしくなっていく光景は見ているだけで嬉しくなった。エピローグもたくさんの子供たちに囲まれて、戸惑いながらも笑顔を見せて…と、彼女が好きな身としても満足のいくものが用意されていた。この先も幸せでいてほしい。
まだまだキャラクターについては語り足りない、それほどまでに魅力溢れるキャラクター達の集まった作品であった。彼らと戦い抜いた日々が、今ではかけがえのない思い出となっている。本当にこの作品をプレイしてよかった。