読み始めは笑いながら読むことができたが、段々と笑うことができなくなっていった。期待していなかったとはいえ、こんなものを世に出していいのかと何度も思ってしまった。
奇跡的に発売することができたpropellerさんの最新作。正直ちゃんと出るとは思っていなかったので、商品が手元に届いてとても驚いた。
超常的な力や異形の姿を持つ「異能保持者」と「人間」の対立をテーマに据えた作品であり、治安維持のために結成された主人公ら「特殊機動隊」の活躍が描かれている。序盤はそこそこ丁寧に作られていて、ただ加害者である異能保持者を鎮圧するのではなく、同じ異能保持者として寄り添いながら彼らの心を紐解いていくのが良いなと。ちょっとギャグっぽい会話が入っているのもいい。
戦闘シーンがギャグチックなのも好きで、主人公が銃弾を防ぐシーンなどは声を出して笑ってしまった。制作陣としては「主人公かっこいい!」となることを期待したのかもしれないが、アレを見て笑わないユーザーも少ないだろう。永遠に鳴り響く銃弾を弾く音がまたツボだった。
てな具合で序盤は読む楽しさもそれなりにあって、ヒロインも好きになれそうな子ばかりだったので一瞬だけ夢を見たが、ルート分岐のところあたりから徐々に怪しさが出てくる。ヒロインを部屋に呼び出し、いきなり告白されていきなりえっち…。
まあまあまあ、そんな作品いくらでもあるからと、あまりに雑過ぎる初体験には目を瞑ったが、そのまま進めていくと違和感が生まれてくる。これは本当にこのヒロインのルートなのかと。終盤なんかは異能保持者と人間の共存の核となる話まで語られて、全ヒロインの見せ場が用意されている。その時点で薄々気付いていたが、二周目をやり始めた時はやはり絶望した。そう、シーンとエピローグだけヒロインを入れ替える焼き回し方式だったのだ。
昔ならこういったタイプの作品もいくつかあったが、それをこの時代にブランドの復活となる作品でやってくるのかと、その度胸に一瞬感心すらした。が、雑な初体験とガバガバなストーリーを何周もするとまあ、残るのは怒りだけだった。もう四年くらい延期してもいいから、ヒロインに寄り沿ったシナリオを用意してほしかった。
ハナからあまり期待はしていなかったが、そんな自分ですらドン引きしてしまう罪深い一作だった。終盤における異能保持者たちの扱いや、ヒロインとのシーン等は少しだけ評価したいが、やっていることはまあやばいかなと。次もまたこの感じで出すのか、再び長い眠りに付くのか。どちらの選択をするのかは不明だが、私としては後者を選択してもらいたい。